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CLインテル戦の大勝は必然か?
新監督がシャルケにかけた「魔法」。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2011/04/12 10:30
プロ選手としての経験はないが、52歳で監督歴28年を誇るラングニック
キックオフ直前、バウムヨハンとサルペイの少しだけ長い抱擁が変化を物語っていた。
4月5日、CL準々決勝のファーストレグ。シャルケはインテルのホームスタジアムであるサン・シーロで5対2の大勝をおさめた。
「ファンタスティックな試合だった。10対5とか、8対4というスコアになっていた可能性もある。我々がオフェンシブなメンバーで試合に挑んだからだろう。素晴らしい夜だね」
およそ2週間前に就任したばかりのラングニック新監督は、饒舌なコメントとともに試合を振り返った。『レビアー・スポーツ』紙は、この一戦を「ミラノでの魔法の夜」と伝えている。
ラングニックは前監督が冷遇していた選手に活躍の場を与えた。
では、新監督はどんな変化をもたらしたのだろうか。
試合が始まる直前、選手たちは、ハイタッチや抱擁など思い思いの方法でチームメイトとのきずなを確認する。「素晴らしい夜」が始まる前、ひときわ長く抱き合ったのが、シャルケの左SBサルペイと左MFバウムヨハンだった。実はこの2人、今季はマガト前監督のもとで4部リーグに所属するシャルケのアマチュアチーム行きを命じられていた。
サルペイは今年に入ってからトップチームに戻ることを許されたが、バウムヨハンはマガト前監督の下ではトップチームでプレーすることを最後まで許されなかった。
次の試合の対戦相手を想定した戦術練習で相手チームの選手のダミー役としてトップチームに混ざることはあったが、その戦術練習が終わればアマチュアチーム所属の選手はピッチから追い出される。トップチームの選手たちがピッチの中でボールを蹴るのを横目に、バウムヨハンはピッチの外をただただ走るように命じられていた。ところが、今は違う。
「マガトはいつだって、僕のことを否定的に見ていた。でも、今はラングニック監督が何を期待しているのかがわかるのさ」
かつて同チームを指揮したラングニックが戻ってくると、バウムヨハンはトップチームに呼び戻されたばかりか、先発に名を連ねるようになった。インテル戦では、1点目の起点となるコーナーキックを蹴り、2点目のゴールを決めたエドゥにラストパスを通す活躍を見せた。
キャプテンのGKノイアーは、こう評する。
「バウミーはこの試合で証明したんだ。彼は(リザーブチームが戦う)4部リーグだけではなくて、CLでも通用する能力を持っているということをね」