リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
リーガで最も旬なストライカー、
ジョレンテが覚醒した理由。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/04/09 08:00
1985年生まれのジョレンテは、11歳のときにビルバオの下部組織に加入。2005年にトップデビューを果たした。2010年W杯では、決勝トーナメント1回戦のポルトガル戦に出場
今、スペインで最も旬なストライカーは誰か?
もしそう訊かれたならば、フェルナンド・ジョレンテと答えるべきだろう。
バルセロナ、レアル・マドリーをはじめ、マンチェスターのユナイテッド、シティの両クラブが獲得を狙っていると噂されるアスレティック・ビルバオのエースは、目覚ましい成長を披露している。
今季15ゴールを挙げ、シーズンゴール数で自己記録を更新したジョレンテの活躍なくして、バスク純血主義を貫くビルバオがヨーロッパリーグ出場圏内争いをすることは不可能だったろう。
195センチ、90キロの体躯を活かし、ペナルティエリア内で圧倒的な存在感を発揮するジョレンテ。リーガ得点ランキングでは、1位ロナウド(28点/レアル・マドリー)、2位メッシ(27点/バルセロナ)、3位ビジャ(17点/バルセロナ)に次ぐ位置につけている(4月4日現在)。
バルセロナやレアル・マドリーほどにボールを支配してチャンスを作ることができないビルバオにあって、この数字を残していることが彼の勝負強さ、プレー精度の高さを示している。もし彼がバルサやレアルでプレーし、より多くのチャンスを得たならば、どれほどのゴールを挙げるのか。現在のジョレンテは、そういう期待を誰よりも抱かせるFWなのだ。
南アW杯で“狭いスペースでプレーすることを学んだ”ジョレンテ。
では今季のジョレンテは何故、自己ゴール記録を更新するような成長を遂げたのか。そのカギは昨年の南アフリカW杯にある。
W杯開幕前の合宿を含めれば約2カ月間、スペイン代表と共に過ごした。これはジョレンテにとって初めての経験だった。
それは彼が“狭いスペースでプレーすることを学んだ”2カ月間でもあった。彼はこう語る。
「狭いスペースでボールを動かすのが世界で最も上手い選手たちと毎日プレーするのは刺激的だった。代表とビルバオはプレースタイルが全く違う。ボールを常に持ち続けて攻撃を仕掛ける代表で、自分はどうプレーすべきか。それは自分も正確にボールをコントロールし、プレーの精度を高めることだった。
そうするためにどうすべきかを日々学ぶことができた。シャビやシルバ、イニエスタ、セスク、ビジャ、ペドロたちのように狭いスペースでのプレーを得意とする選手はどのようにプレーしているのか。自分は彼らとは違うタイプだけど、だからこそ彼らから得るものがあったんだ」