リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
リーガで最も旬なストライカー、
ジョレンテが覚醒した理由。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/04/09 08:00
1985年生まれのジョレンテは、11歳のときにビルバオの下部組織に加入。2005年にトップデビューを果たした。2010年W杯では、決勝トーナメント1回戦のポルトガル戦に出場
シャビやイニエスタのボールコントロールの秘密とは?
ジョレンテが“小さい選手たち”から学んだこと。それは実に基本的なことだった。
「彼らに共通していたのは足の運び方なんだ。より繊細なコントロールと次の動きへの移行をスムーズにする足の運び方。彼らと練習するまでは、ああやってボールをコントロールすることは彼らにしかできないことだと思っていた。もちろん、今もその考えは変わらないよ(笑)。
でも、どうしてあんなに上手くボールを扱うことができるのか。彼らが使っているのは手じゃなくて僕と同じ二本の足なんだ。何かを学ぶことはできる。そう思って彼らの動きに注意を払っていたんだ。すると、自分と彼らとの大きな違いは足の運び方だと気付いたんだ。彼らは足を内側に運ぶんだ」
彼は“足を内側に運ぶ”ことをこう説明した。
「歩幅をどんどん狭めていった時にどうやって足を動かした方が、ターンしやすい? 右足と左足を開いたまま、歩幅を狭くしてみて欲しい。そこから左右どちらかにターンするとどうなるか。両足が横に開いたままではどうしても外を回るターンになってしまう。逆に両足を閉じるようにして歩幅を狭めると、より小さくターンすることができるんだ」
ジョレンテの表現を読者の皆さんにも試して欲しい。彼の説明通りに足を動かしてターンしようとすると、どちらが小回りの利く足の運び方であるかを実感することができる。
正確無比なボールコントロールが選択肢の幅を拡げる。
小回りの利く足の運びができれば、自分の動きをよりコンパクトにコントロールできるようになる。これは世界で最も細かく速いパス回しを実現しているバルセロナの選手たち、そしてそれに次ぐパスサッカーを実現しているスペイン代表の選手たちにも共通している足の運び方だ。
例えば両足を開き移動する相撲のすり足は、相手からかかる重さに対して最も安定した足の運び方だ。だが、そういう足の運び方、置き方がサッカーで必要なのは相手を背負ってポジションをキープする時が主で、相手との接触プレーを回避するために細かくステップを踏んで方向転換するための動きには適さない。
その大柄な体をよりコンパクトにコントロールするための足の運び方に着目したジョレンテは、そこからまた新たな発見をしていく。
「ボールがきた時に正確にコントロールできれば、それだけ気持ちに余裕が生まれる。スペースに入る動きも、タイミングや角度を変えてみたりと、色々なことを試すことができるようになったんだ。そうやって何かを試そうとすることはどういうプレーを狙うのかをより明確にすることにつながる。つまり、より素早く頭を働かせるようになるんだ」