青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
マスターズは日本ゴルフ界の正念場。
石川遼は本当の信用を獲得できるか?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2011/03/31 10:30
なかなかアメリカ修行の結果が出ない石川遼。日本人プロゴルファーの誰しもが夢見、そして苦戦するアメリカ・ゴルフ界への挑戦。その壁の高さは並大抵ではないだろう
日本勢の相次ぐ不振のせいでポイント配分が見直しに?
ただし、恵まれた状況が当たり前だった時代から、少しずつ風向きは変わりつつある。原因はなんといっても日本人選手の海外での不振にある。
昨年8月の全米プロでは日本勢5人がそろって予選落ちし、今年2月のアクセンチュア・マッチプレーでも石川、池田、藤田がそろって1回戦で姿を消した。しかも、昨年日本ツアー賞金王の金庚泰やブレンダン・ジョーンズといった日本で活躍する外国人選手まで1回戦で全滅してしまった。
これでは日本ツアーの実力に疑問が投げかけられてもおかしくはない。
今年7月の全英オープンでは国際ゴルフツアー連盟の理事会が開かれることになっている。日本ゴルフツアー機構の山中博史専務理事がマッチプレー全滅を受けて「今回の結果で世界ランクのポイントのことで他のツアーからいじわるされちゃいますね」と危機感を募らせていたのは、その会合で各ツアーへの配分ポイントが改定される可能性があるからだ。
通常の米ツアーの大会でも世界ランク40~50位の石川や池田が70人のカットラインにかすりもしない状況が続いている。ランクに結果が伴わないのであれば日本ツアーに与えるポイントを減らして実力に見合ったものにしよう、という意見が出てきても不思議ではない。むしろそのほうが自然だろう。
そして、7月の理事会に向けた技術委員会が開かれるのが今回のマスターズなのだ。
マスターズは日本ゴルフ界の地位を守る戦いでもある。
日本ツアーで世界ランクを上げた選手は、海外に出ればそれに見合った活躍を見せるある種の義務を背負う。厳格なルールこそないものの、世界選手権での成績が五輪の出場枠に影響するようなフィギュアスケートや柔道、カーリングなどと共通する部分があるのだ。
もしポイントが減らされる事態になれば、日本ツアーでいくら頑張っても世界ランクは上がりにくくなり、必然的にメジャーなどへの出場機会も遠のく。いくら個人競技ではあっても、これは日本ツアーの全選手にあてはまる問題である。
もちろん危機というばかりでなく、世界が注視するマスターズは日本ツアーへの評価を高める絶好の機会でもある。世界への扉を押し開くか、閉ざしてしまうかは、まさに石川たちの戦いぶりに懸かっている。