オリンピックシーズンとなる2025-26シーズン開幕を前に、坂本花織選手と樋口新葉選手は今季限りでの引退を表明しました。これまで何度も2人を取材してきた野口さんに、このタイミングでの表明の意味、新プログラムへの期待などを伺いました。
「ふたりは東と西で競い合ってきた、本当の“戦友”ですよね。一緒に北京オリンピックにも行けて、団体戦のチームとしても一緒に戦えて…本当に仲がいいんです。この2人がほぼ同時期にシーズンインの前に引退を宣言しておくというのは、素直にすごいと思いますね」
坂本選手24歳、樋口選手25歳。スケート年齢としては1年違いますが、学年としては坂本選手が早生まれのため、同級生です。2人は今の時代の日本フィギュアスケートを背負ってきた存在であり、自分とスケートの関係を考え、「ベテラン」と呼ばれる域になってもトップであり続けています。

野口さんは「年齢的にも節目だとわかっていたものの、事前に宣言できるというのば2人の強さだと思います」と評価します。心の中で節目だと決めていたとしても、表明しなければ、万が一うまくいかなかったとしてももう1年続ける……という選択肢も残せます。しかし、2人はあえてその逃げ道を作りませんでした。
「それだけこのシーズンをきっちりと、一つひとつの試合を大事に戦っていこうという戒めを自分に対して課しているのだと思います。追い込まれた方が自分が頑張れるタイプだとわかっているのだと思います」。野口さんは2人の宣言を、決して後ろ向きではない、むしろ大いに前向きな宣言であるととらえています。
坂本選手のラストシーズンの選曲は、ショートが『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』、フリーが『愛の讃歌』。『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』は振り付けを担当するブノワ・リショーさんの選曲。決して「さよなら」という意味ではなく、20年のスケート人生を振り返るものだと読み解きます。フリーは坂本選手みずからの選曲であり、ソチオリンピックで鈴木明子さんが滑った曲でもあります。

この2曲は、ともに坂本選手のスケーティングを存分に活かせるものとなっています。昨シーズンはショートではタンゴを、フリーでは『シカゴ』を選び、音に合わせてポーズをしっかりと決めていく「音はめ」の要素が強いプログラムでした。あえてチャレンジをしたシーズンを経て、坂本選手の本領発揮となることは間違いありません。
樋口選手のショートは『My Way』、フリーは『ワンダーウーマン』。『My Way』は振付師のジェフリー・バトルさんが、「自分が引退する時に使いたかった曲」だと提案してくれ、締めくくりにぴったりだと決めました。これまで樋口選手のショートは力強く、アップテンポな曲調が多かったのですが、今回は自分の感情をそのまま出し、樋口選手のスピード感、伸びやかさが生かされる曲になっていると野口さんは話します。
ポッドキャストでは以下の話題でも盛り上がりました。
- オリンピック選考3回目、大変だとわかっているからこそ
- 樋口選手の「良さ」を活かすために
- チャレンジングだからこそ苦しんだシーズンを経た坂本選手
- オリンピックシーズンだからこその覚悟
- 2人で旅行して何を話していた?
それぞれの集大成となるシーズン、2人の演技を「早く見たい!」と盛り上がった野口さんと聞き手の藤井。1試合1試合を噛み締めながら見ていきたいと感じました。(7月22日収録)
※ポッドキャストをお聴きいただけるのはNumberPREMIER会員限定で、このページ下部でご視聴いただけます。
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