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【インタビュー】「私にはこの悔しさが必要だった」坂本花織が語る試行錯誤シーズンの内幕と“あの涙”の理由「自分じゃないんだ、と自覚した途端…」

3月の世界選手権では銀メダルを獲得した坂本
4連覇の期待と重圧を背負い、ボストンへ。臨んだ世界選手権、結果は銀メダルだった。「久々に、心から悔しいと思える試合でした」試行錯誤を続けた五輪プレシーズンを終え、日本のエースは“揺るがぬ決意”を語る。(原題:[3度目の五輪に向けて]坂本花織「私にはこの悔しさが必要だった」)

 4月9日。「今日の予定は?」と尋ねると、彼女は笑って答えた。

「さっきまでトレーニングしていて、これから夜練(夜の練習)に行きます」

 25歳を迎えた特別な日も、坂本花織はいつもと変わらない一日を過ごしていた。

「『お祝いしないとね』と言ってくれる人、いっぱいいるんですけど、『今年は延期で、来年に繰り越しで。あと1年待って』と伝えて、今はスケートに集中しています」

 3月下旬にアメリカ・ボストンで行われ、銀メダルに終わった世界選手権から2週間近くが経っていた。

「試合が終わって、気づいたら今、という感じなので。整理しきれてはいないです」

 その中で懸命に振り返り、言葉を紡ぎはじめた。

「それが勝手にストレスになってしまっていたかも」

 今大会は4連覇が懸かっていた。周囲の期待も大きかった。坂本はシーズン当初「あまり意識していない」としていた記録だったが、大会が近づくと一転、目標に掲げた。それは意図があってのことだった。

「(昨年末の)全日本選手権のときも4連覇をめざしてはいたけど、そこまで重きを置かずに取り組んでいたんです。でも、あまり自分らしい演技ができなかった。また、2月、3月上旬くらいまでは正直調子があまり上がっていなくて。だから、言ってしまったことは絶対やらないといけないという気持ちになるので、自分のギアをあげようと『(世界選手権4連覇を)やります』と言い切りました。それが勝手にストレスになってしまっていたかもしれないです」

 自ら口にしたから、というだけでなく、ニュースや記事の見出しに躍る「4連覇」という文字も知らず知らずのうちに重圧になっていたのかもしれない。迎えたショートプログラム、プレッシャーは「ちょっとどころか、かなりありました」。ジャンプにミスが出て5位にとどまる。ただ首位のアリサ・リュウ(アメリカ)との得点差は3.55、逆転可能な位置につけた。

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photograph by Shino Seki

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