ドイツW杯に向けてのアジア最終予選が始まった頃、ある日本代表の選手はこう嘆いていた。
「ジーコ、やばいよ」
当時、その選手に迷惑がかかると思い、彼の監督批判を記事にすることはできなかった。今となってはジーコに戦術がないことをきちんと報じていれば、ドイツW杯のような結果にはならなかったのではと自分自身に腹が立つし、勇気がなかったことを恥ずかしく思っている。
だが、ジーコ批判に踏み切れなかったのには、もうひとつ理由がある。
アジアという“サッカー後進エリア”にいる日本では、監督の技量が問われる試合が少ない。W杯予選は4・5枠ということを考えれば突破して当然で、アジア杯はトップ4とそれ以下の国の実力差が大きく、ノルマを設定しづらい。コンフェデ杯も世界的に見れば、本気のメンバーで参加する国は少なく、ただのお祭りだ。欧州ではユーロ予選→ユーロ→W杯予選→W杯という真剣勝負のサイクルがあるが、残念ながらアジアではハイレベルな試合を味わえるのは、4年に1度のW杯本番でしかないというのが現状だ。選手の一部から、監督に対する悲鳴のような言葉が漏れ聞こえてきても、それが選手の思い込みなのかどうなのかを探る場が日本には少ない。結局オシムが監督になっても、彼の力をきちんと評価できる試合が4年後まであるかどうか疑問だ。
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