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《インタビュー》坂本誠志郎が語る“打たれた者”にしかわからない「1球の怖さ」とは?「大智はもっと強くなって帰ってくる」

2026/04/09
昨秋の日本シリーズの敗戦は、心の中に大きな悔いを残した。試合に潜む「1球の怖さ」を知った、プロ11年目32歳の今季に懸ける思いとは。(原題:[正捕手インタビュー]坂本誠志郎「あの1球から学んだこと」)

「ああ、しんど……」

 2025年の秋、坂本誠志郎が日本シリーズを戦う福岡ソフトバンクホークスの打線と向きあうなかで芽生えた感情である。全5試合に先発し、捕った球数は735球。「はよ、前飛ばせ……」。マスク越しに何度、ボヤいたことか。かれらは打つべきボールと見送るボールを見極め、局面に応じて打ち方を変えてきた。その狡猾さ、しぶとさと格闘する日々だった。山川穂高(ほたか)に浴びつづけたアーチだけでなく、取るに足らないヒットにまで「1球の怖さ」が潜んでいた。

 なぜ日本一に届かなかったのか――。

 日本シリーズを振り返った坂本にとって、示唆に富んだシーンのひとつが10月30日の第5戦にあった。2点リードの8回1死一塁で、リリーフの柱である石井大智が柳田悠岐(ゆうき)に同点アーチを浴びた場面である。

 坂本は外角に構えた。初球。寸分の狂いもない石井の速球はミットめがけて飛びこんでいく。打たれるはずがない球だった。だが、150kmは柳田に打ち砕かれた。左翼ポールめがけて高く舞い、スタンドに吸いこまれていった。勝負の流れがホークスに傾く、土壇場での同点2ランになった。

「僕はあの1球を咎めることなんてできません」

 意外だったのは試合後である。

 日本シリーズを敗退した甲子園のクラブハウス。坂本は、責任を感じて涙した石井と話し込もうとしなかった。いや、声をかける必要を感じなかったというべきだろう。

「日本シリーズが終わった段階で僕個人としてはいろんなことを考えました。本当はこうだったのかな、もっとこうしておけばよかった……とか、でも、それを大智にこうしてほしい、こうしたかったと伝える感覚は僕にはありません。だから、大智と一緒に振り返ろうというのはなかったですね。シーズンを通してあれだけの投球をしてきて、日本シリーズもずっと投げてきた大智があの場面で打たれても、僕はあの1球を咎めることなんてできません」

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photograph by Kiichi Matsumoto

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