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「数年前から座禅を取り入れて」スキージャンプ女子の“新エース”…丸山希27歳が向き合う「恐怖心」とゲートの先の“一瞬”《今季W杯で3連勝》

2026/02/07
4年前の挑戦は突然のアクシデントで幕を閉じた。そこから這い上がって、昨夏に一気に覚醒。日本女子の大黒柱へと成長した27歳は、初の大舞台で頂点を見据えている。(原題:[新エースの道程]丸山希「ゼロから恐怖心を乗り越えて」)

 スタートゲートを出て助走姿勢に入った。高さ133mの大倉山ジャンプ競技場。遠くには札幌の街が見える。バランスよく体重を乗せて、安定したアプローチが組めた感覚があった。板が走り、時速90km近くまで加速する。その流れのままに空中に飛び出した。踏み切りでの力の伝わり方、方向性も悪くない。スキー板で風を感じながら、飛距離はぐんぐんと伸びていく。

「自分が飛んできた中で一番いいジャンプかもしれない」

 そう思える飛躍だった。K点を越え、やがてランディングバーンが近づいてきた。

 丸山希には、その先の一瞬の記憶がない。

 気づくとランディングバーンに倒れていた。トレーナーがスキーを外してくれている。腕は上がらず、肩が痛い。そのときは足よりもそっちの方が気になっていた。

 2021年10月の全日本選手権、丸山は1本目に129.5mの大ジャンプを見せたものの、着地で転倒。左膝の前十字靭帯や半月板を損傷する大ケガを負った。当時23歳。W杯では表彰台に迫るような成績を残し始め、五輪出場が見えていた。しかし、4カ月後に迫っていた北京五輪への道はここで断たれた。

 都内で手術を受け、最初は階段の昇降もままならなかった。「この足ではどうやっても金メダルという自分の目標には届かない」という現実を突きつけられたことで、まだ残っていた悔しさに区切りをつけることができた。

 そこが4年後への出発点になった。

「私っていいとこ取りの性格なのかもしれないんですけど、転んだところはあまり覚えてないんです。でも、いい助走の滑り、飛び出し、空中の感覚は覚えていた。それを忘れずにリハビリできたのが、今に繋がってるんじゃないかと思います。ゼロから始まった4年間、いい意味でゼロから作り直せた4年間だったと思います」

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photograph by JIJI PRESS

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