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「今は道具と一緒に成長している」高梨沙羅はなぜ道具との向き合い方を見直し、意識が外へと向かい始めたのか「いろんなことにトライして、吸収したいな」《特別インタビュー》

2025/11/23
来年2月のミラノ・コルティナオリンピック開幕まであと3カ月を切った。29歳となった今も飛び続ける第一人者は、現状を打破するために道具への向き合い方も見直しながら勝負のシーズンに挑む。(原題:[五輪シーズン開幕]高梨沙羅「『限界』のその先を求めて」)

 古典的で少し意外な気もするが、シーズンが始まる前、高梨沙羅はいつも神社にお参りにいくことにしている。

 スキージャンプで神頼みといえば風。奈良県に風の神様を祀った神社があり、高梨自身か、都合がつかないときには母親が、毎年足を運んできた。

「もう何年くらいだろう。10年くらいは経つと思います。今年は時間がなくて母が行ってくれる予定なので、私はこないだ北海道神宮にお参りに行ってきました。札幌にいる間に雪も積もって、冬が来たなあって。遠征の荷造りに時間はかかりません。もうスーツケースがタンスみたいなものなので、そこに冬物を入れていくだけなんです」

 いつも通りのシーズンの始まり。ただ、当たり前でないことを積み重ねてきたシーズンの始まりでもある。

「ひとりでできることには限界があるなと痛感させられました」

 ひとつの転換点は3年前の北京五輪にあった。スーツの規定違反で失格となった混合団体がクローズアップされることが多いが、個人ノーマルヒルでの4位という結果にも高梨は思うところがあった。

「その前のオリンピックから4年かけてジャンプを一から作り直してきて、それを出し切れた感はありました。でもメダルには届かなかった。どんなジャンプを目指して、どんな練習をするのか。周りの意見よりも、自分の感覚と意志で作ってきたと言えるジャンプだった。それだけに、ひとりでできることには限界があるなと痛感させられました」

AFLO
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 混合団体の苦い経験で進退まで考えた時期を経て、高梨は「支え続けてくれた人への恩返しのために」と再び五輪を目指す決意を固める。

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photograph by Asami Enomoto

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