監督になって3年目、新井貴浩は一人で酒を飲む夜が増えたという。プレーヤーだった頃は一人が嫌いで、いつも仲間たちと食卓を囲んでいた新井が、今は音のない空間で、芋焼酎のグラスを傾ける。
「悔しくても腹が立っても、表情に出さないようにしないといけない。ぐっとこらえて、腹の中にしまっておかなければならない。そういう場面がたくさんある。監督って、誰にも言えないことがあるから」
この世の「監督」と肩書きを背負うあらゆる人たちと同じように、新井は人生で初めて味わう種類の孤独に身を置いている。
処暑を間近にしても全く翳りを見せない暑さへの対策なのだろうか。8月21日の横浜スタジアムには、バッティングケージのすぐ後ろに簡易式のテントと椅子が設置されていた。午後4時過ぎ、このテントの下で末包昇大が座っていた。バッティング練習の順番を待つ彼の背中には心なしか力がなく、宙を漂う視線はどこか虚ろだった。188cm、112kgの長距離砲は4番を降ろされ、スターティングメンバーからも外れることが決まっていた。このところの彼はそれだけ低調だった。

前夜のベイスターズ戦では敗戦の象徴となった。両軍合わせて25本のヒットが飛び交い、11得点が記録された打ち合いの中で、末包は4打数ノーヒット。チームはのべ7人のランナーを彼の前に溜めたが、返すことができたのは犠牲フライによる1人だけだった。結果からすれば、当然の降格劇だと言えた。
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