両チーム合計29安打25得点、7本塁打が飛び交った超乱打戦。今も甲子園の「名勝負」として語られる2006年夏の準々決勝、帝京対智弁和歌山の一戦は、帝京のちょっとした「奇襲」から始まった。
前田三夫監督が試合前のプランを明かす。
「智弁和歌山は力のあるチームで、優勝候補でしたからね。劣勢なのはわかっていたので『奇策を考えないと』と。自分のチームの選手に緊張感を与える意味も込めて、高島という1年生を先発させました」
高島祥平は東東京大会で3試合6回2/3しか投げておらず、甲子園でも3回戦まで登板はなかった。だが、1年生ながら思い切りのよい投球を、前田は評価していた。
甲子園春夏通算40勝(当時)の名将は、意外性に期待しつつ、先も見据えていた。
「主力ピッチャー以外の選手に投げてもらうことも、あり得ると思っていました」
先発の高島は2回途中3失点と、早々に相手打線の餌食となった。2番手の2年生左腕・垣ケ原達也も5失点。指揮官は7回途中からエースの大田阿斗里を登板させた。
8回終了時点でスコアは4対8。このとき、前田は負けを覚悟していたが、選手たちの気概は失われていないと肌で感じた。
「納得した形で終わらせてやりたい」
9回表。普段ならないことだが、選手に意見を訊いて、先頭の大田に代え、打力の高い沼田隼を代打に告げた。
この起用が、帝京への追い風となった。
2死一、二塁から5連打で逆転。そして、打者一巡で再び打席が回った沼田に3ランが飛び出し、一挙8点と打線が爆発した。
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