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「ドジャースは“悪の帝国”なのか」“スター”が生んだ潤沢な資金を選手獲得、医療部門、スカウティングに投資《「野球史上で最強」1998年のヤンキースと比較も》

2025/03/19
勝利を重ねても貪欲に補強を続け、ここ2年は市場を席捲した。その姿勢は、かつて栄華を誇った東の名門と比較される。これほどまでに人も金も集まるのはなぜか。「一強」の仕組みを紐解く。(原題:[最強の組織論]ドジャースは“悪の帝国”なのか)

 全国紙「USA TODAY」が「ドジャースが新たな『悪の帝国』としての地位をゆるぎないものにした」の見出しで、名物記者ボブ・ナイチンゲールの電子版記事を掲載したのは今年1月だった。同じ頃、スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」も今オフの戦力獲得競争で独り勝ち状態のドジャースを「悪の帝国はウエストコーストに移ったかもしれない」と表現した。

“悪の帝国”は冷戦期にロナルド・レーガン米大統領(当時)がソ連を称した言葉として知られる。もともとMLBで“悪の帝国”といえばFA市場に大金をつぎ込み、次々とスター選手を囲い込んだ2000年代のヤンキースの代名詞だ。2002年オフ、キューバ球界の有力投手ホセ・コントレラスの争奪戦に敗れたレッドソックス球団社長がそう呼んだことで広まった。ではMLB版“悪の帝国Ver.1”と現在のドジャースは何が違うのか。現場取材者たちの声を聞いてみた。

 1998年のワールドシリーズで、ヤンキースはパドレスに4連勝と圧倒した。当時、サンディエゴの地元紙「ユニオン・トリビューン」のパドレス担当として、その強さを目の当たりにしたビル・センター記者はヤンキースの「バランスの良さ」を強調した。

「打線に3人もスイッチヒッターがいて、1番から9番まで長打力もある。先発、ブルペンにもまったくスキがない」

98年のヤンキースが「野球史上で最強チーム」と呼ばれる理由

 同年のヤンキースは公式戦で30本塁打以上を記録した打者がいなかったにもかかわらず、レギュラー全員が2ケタ本塁打を放ったうえに、チームOPSは.825と極めて高かった。先発陣ではデビッド・コーン、デビッド・ウェルズ、アンディ・ペティットの3人だけで完投が16もある。「専門家の多くが1998年ヤンキースを野球史上で最強チームと考えている」とセンター記者。2000年代にかけて栄えた“悪の帝国Ver.1”は、このチームが原型となった。

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photograph by Nanae Suzuki

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