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[160kmを生み出す源]山崎颯一郎「裸エプロンと球速へのこだわり」

2023/01/26
日本一に輝いた投手陣の一角を担うのは、球団日本人史上最速の球を投じる“吹田の主婦”。速度を追求して得た見た目以上に厚い筋肉は、白球に力を乗せる時、どのような動きを見せるのか。

「じゃあ次は、ボールを投げる動作をしてもらえますか?」

 カメラマンのリクエストに、背中を向けた山崎颯一郎がその右腕をゆっくりと引き絞った。動き始めた肩甲骨をスイッチに“電流”は広背筋を伝わり、腰のひねりによって下半身からのパワーも加えて増幅されていく。肩から肘、指先へ――。うねるような筋肉の蠢きによって、力が伝わっていく回路がくっきりと浮かび上がった。

 自慢の筋肉は、「肩周り」だという。

 「この前、病院でメディカルチェックを受けたんです。エコーで肩の筋肉を見てもらっている時に先生が突然、『あれ、おかしい……そんなことないよな。でも間違ってないしなぁ』って。何かと思って聞いたら、見た目より筋肉がもの凄く分厚くてびっくりするような数値が出ていたみたい。嬉しかったですね。分かってんじゃん、って」頰にくっきりとエクボが浮かんだ。

 プロ入り6年で、通算成績は登板24試合、2勝4敗1セーブ6ホールド。特段華やかではないその成績に反してプロ野球ファンが熱い視線を注ぐのは、昨シーズン歴史的なデッドヒートを制し頂きへと駆け上がったオリックス・バファローズの最終盤の戦いで、山崎が鮮烈な活躍を見せたからだ。

 セットアッパーとしてヒリヒリするような試合展開の終盤にマウンドに上がっては相手バッターを剛球でねじ伏せた。ソフトバンクとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで、球団の日本人史上最速となる160kmをマーク。進んだ日本シリーズでは、第2戦でヤクルトの主砲・村上宗隆をストレートで見逃し三振にとるなど熱い真っ向勝負を演じ、26年ぶり日本一の立役者となった。11月には野球日本代表「侍ジャパン」の強化試合メンバーに選ばれてデビューするなど数カ月で一気にスターダムを駆け上がった24歳。大きな飛躍の翼となったのは、その「筋肉」だ。

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photograph by Hideki Sugiyama

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