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「超えるのは無理」「戦うことを目指す存在」寺地拳四朗・中谷潤人が語る“モンスター”井上尚弥への本音《同時代チャンピオンの告白》<Best Selection>

2024/09/16
左から中谷潤人、寺地拳四朗
2団体統一王者と3階級制覇王者。卓越した実績をあげる2人だが、同じ業界にはあの男がいる――。同時代に生きるがゆえに逃れられないモンスターからの影響を披瀝する。2024年1~7月にNumberPREMIERで公開された記事の中で、人気の高かった記事を再公開します。今回はボクシング・寺地拳四朗選手と中谷潤人選手のダブルインタビュー記事です。《初公開:2024年5月31日/肩書などはすべて当時》

「命を削る」ボクシングを見つめ直している寺地。

 ライトフライ級の2団体統一チャンピオン、寺地拳四朗のファイトが熱い。直近では1月23日、カルロス・カニサレスとダウン応酬の熱戦を演じ、辛くも判定で逃げ切った試合は、スリルとアクションに満ちたハリウッド映画のようでもあった。

 試合が「面白い」と称えられる。「感動した」とほめられる。それはボクサーにとってこの上ない喜びだ。寺地もそう感じている。ただ、最近の感情はそう単純でもない。

「ああいうヒヤヒヤする試合は面白いんだと思いますけど、命を削ってる感はありますね。人間、ほめられるとがんばるじゃないですか。メインを任されて『盛り上げなあかん』とも思う。そういう気持ちが距離感を狂わせるんですよ。倒そうと思えば体は微妙に前に出る。知らん間にスタイルが変わっていく。バグっていくんですよ」

 寺地は2022年11月、京口紘人との2団体統一戦でアマゾン・プライム・ビデオのメイン・イベンターに抜擢された。以来、4試合はすべてメインで、いずれも壮絶なファイトを披露した。そしてカニサレス戦を終え、右拳を手術したこの機会に、自らのボクシングを見つめ直しているのだ。

「危険な戦い方をしてますよね。自分の映像を見て、八重樫さんもそうだったのかな、と思うんですよ。八重樫さんが現役のころ『あんなに殴られるの嫌やな』と思って見てたんです。それが今は自分も同じになってる。分からんもんですね」

Hiroaki Yamaguchi
Hiroaki Yamaguchi

 元3階級制覇王者の八重樫東は現役時代“激闘王”と呼ばれたが、最初からこのようなスタイルを好んでいたわけではない。バチバチの試合がファンの期待を高め、気がつけば激闘が定着していた。

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photograph by Nanae Suzuki / Takuya Sugiyama

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