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【低反発バット元年を振り返る】大社旋風、京都国際優勝…2024年夏の甲子園は「1点」の重みが増してドラマも誕生《将来の球児はバットにさらに適応?》

2024/09/13
今夏は史上初のタイブレーク決勝の末、京都国際が初優勝。常総学院(2003年)以来の0本塁打での戴冠となった
疑問視する声が多く挙がった新基準バット適用。統一元年の今夏、その影響は如実に数字に表れた。本塁打数は大きく減り、1点を巡る攻防が増加。高校野球界が大きく変わろうとしている。(原題:[聖地に訪れた夏の大変革]“低反発バット”は甲子園に何をもたらしたのか)

 今春から高校野球界では、公式戦で使用する金属バットが、従来よりも飛距離や打球スピードを抑えた「新基準バット」に完全統一された。金属バットの基準変更は、2001年以来。久々の大改革である。

 本塁打は野球の“華”だ。柵越えをした打者は観衆の視線を独占し、球場は沸き立つ。野球において、唯一ゆっくりと走ることが認められる、特別なプレーでもある。

“低反発バット”と呼称される新器が導入され、飛距離が出づらくなる。それは本塁打の減少を意味しており、「試合が盛り上がらなくなるのでは?」「野球がつまらなくなる」とささやかれた。興行的な視点のみならず、従来よりもバットの定価が上がることで、「全国各校の経済的負担になる」との意見も挙がった。

 事実、新基準に完全統一されて初めての公式戦となった今春のセンバツは3本塁打にとどまった。内1本はランニング本塁打で、柵越えはわずか2本。基準変更の煽りを真っ向から受ける形となった。

智辯和歌山・花田悠月は昨秋から木製バットを使用 Asahi Shimbun
智辯和歌山・花田悠月は昨秋から木製バットを使用 Asahi Shimbun

長打は激減も、エキサイティングな試合は多数。

 高校野球は12月から3月初旬まで、練習試合が禁じられる。センバツは実戦再開から間もなく開催されるため、打者の感覚が戻りきらず、例年“投高打低”になりやすいとされる。そのため、「夏を見ないことには判断できない」とも言われた。では、この夏の結果はどのようなものだったか。

 まず本塁打は7本にとどまった。前年の23本から激減しているだけでなく、高校野球に金属バットが導入された1974年以降では最少の本数でもあった。長打全体に目を移しても、同じく48試合が実施された昨年の二塁打が142本だったのに対し、今夏は88本。三塁打は2年連続で19本だったものの、試合を観ていても角度の付いた打球の失速が目立ち、基準変更がもたらした影響を如実に感じさせた。

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photograph by Hideki Sugiyama

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