昨季は世界選手権を制覇し、日本新記録も叩き出した。だが、女王に慢心はない。スピードとパワーを高め、自身が納得できる投てきをひたすら追い求め続ける。すべては理想の放物線を、パリの空に描くために。(原題:[逆境からの復活]北口榛花「会心の一投を求めて」)
「世界女王」の称号を手に、陸上女子やり投げの北口榛花は五輪イヤーを迎えた。
昨夏、世界選手権で表彰台の頂点に立っても「世界チャンピオンだけど五輪チャンピオンではないので。挑戦者としてしっかり準備して臨みたい」と気を引き締めていた。追われる立場となり、プレッシャーを感じていたのかもしれない。
どん欲に新しい試みを取り入れ、世界レベルに成長。
記録更新のために必要なものは何なのか。昨秋、北口はやりをより遠くに飛ばすためのヒントは、日本新記録を出した昨季のダイヤモンドリーグ(以下DL)ブリュッセル大会の最終投てきにあると話していた。
その一投は、やりを投げたと同時に体が空中に浮いた。通常は助走から止まって投げるという動作になるが、「流れの中でやりを投げることができた」。まさに理想に近い動きだった。
「その時は偶然それが出たという感じで。体の構造上、常にその動きをするのは難しくて、意図的にできるレベルではない。それが自然とできるくらいまで自分のものにするのが今後の課題」と語る。
この冬はパワーとスピードのアップに注力してきた。春先は練習パートナーとのスプリント練習でもいい勝負ができるようになってきていると自信をのぞかせていた。2月からは投てき練習も開始。助走のスピードが上がったことで、「自分の武器の柔らかさを出すのが難しくなる」と技術とのかみ合わせに少し苦労していたが、「それも徐々に解決して形になってきている」と、シーズンインを前に一定の手応えを感じていた。
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photograph by Hiroyuki Nakamura