満員のハンガリー・ブダペストの国立競技場。割れんばかりの拍手の中、彼女は最終投てきで大逆転のビッグスローを放った。
「本当にすごかったし、手拍子が後押ししてくれました。“あっ、みんなが応援してくれてる”って。ああいう中で試合ができるのは選手として本当に幸せなことです」
ワールドリーダーとして迎えた今夏の陸上の世界選手権。女子やり投げの北口榛花は日本女子選手として初めてフィールド種目で金メダルに輝き、世界の頂点に立った。
「(世界一のタイトルを獲るのは)もっと時間がかかると思っていたんですが、獲ることができて、頑張ってきて本当に良かったです」
快進撃はそれだけに留まらない。9月には世界最高峰シリーズ・ダイヤモンドリーグ(以下DL)年間成績上位者で争うファイナルで日本人初制覇という快挙も達成した。
DLでは昨季を上回る4勝を挙げている。6月上旬のパリ大会で65m09を投げ優勝。約5週後のシレジア大会では自身の日本記録を4年ぶりに更新した。さらに、9月のブリュッセル大会では67m38まで伸ばし、日本記録を再び更新。集中力を極限にまで高め、最高のビッグスローを繰り出した。
「絶対に負けたくない」思いから繰り出されるラストの勝負強さ。
北口の強さはラスト1投の勝負強さに集約されている。世界選手権もDL(シレジア、ブリュッセル大会)も、最終6投目でビッグスローを見せて逆転優勝、または記録を更新しているのだ。土壇場に追い込まれてからがめっぽう強い。
逆境で強さを発揮できるのは、根底に「絶対に今日も負けたくない」「一番になりたい」という思いがあるからだ。今の北口にはどんなに暗雲が垂れ込めても、最後にはひっくり返せるという確信がある。
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