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無良崇人の挑戦は日本男子フィギュア史に刻まれた…最後まで役割をまっとうした“兄貴分”<2018年3月、引退表明>
2024/03/22
(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2017-2018無良崇人 「父子の夢は次のステージへ」)
代名詞であるトリプルアクセルはどこまでもダイナミックでありながら、力強さのベールの向こうに男性の繊細さも溶け込んでいた。無良崇人はジャンプの一瞬に、多くの感情を込められる希有な選手だった。
悲願である五輪の舞台を目指し、集大成として全力を注いだ今季、26歳のベテランである彼がフリーに選んだのは、3季前にも滑った『オペラ座の怪人』。思い入れがあるという曲は、彼のチャレンジを後押しするはずだった。けれども、10月のスケートカナダはGPシリーズ参戦14戦目にして自身初の最下位(12位)。11月のスケートアメリカでは多少持ち直したものの、7位にとどまった。
実質的に“残り1枠”を争う状況で臨んだ12月の全日本選手権。五輪出場には2位以上が求められる中、SPで3位発進となった無良は、自身の状態を冷静に見つめてフリーのジャンプ構成を変更した。4回転ジャンプを冒頭のトウループ1本に絞って全体の完成度を追求。ほぼ完璧な滑りで、今季ベストを35・16点も上回る172・88点をマークした姿は、見る者の心を揺さぶった。総合3位。感無量の涙を流し、ともに五輪を目指した父・隆志コーチの胸に顔を埋めた。
自分らしい演技を見せられないほうが悔しいことだった。
代表入りには届かなかったが、平昌五輪の補欠としてぎりぎりまで調整を続けたところにも、兄貴分として慕われた無良の人柄がにじみ出る。平昌の男子シングルで日本の3選手が無事に滑り終える姿を見届けたときが、現役選手としての最後の瞬間。シーズンを終えたこの3月、第一線を退くことを表明した。
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photograph by Asami Enomoto