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「4回転アクセルをなんとしても成功させたい」羽生結弦が世界選手権後に語った“あと8分の1の推進力”<静かな決意/2021年>
演技が終わり、どれだけ時間が経ったか。
取材の場に姿を見せた羽生結弦は、記者たちの質問にいつものように丁寧に答え続けた。
その語り口は静かだった。時に試合直後とは思えないような穏やかさを感じさせるほど―、どこまでも静かだった。
静かさの中にはまず安堵と、その裏に秘めた情熱があった。そして、どこか明るさも漂わせていた。
2020─2021シーズンの世界選手権は異例の大会となった。
コロナ禍によって昨シーズンは中止となり、2年ぶりの開催だった。場所はスウェーデン・ストックホルム。開催されるとはいえ、コロナの影響は免れなかった。無観客での実施となり、選手は現地到着後にホテルでの隔離を経るなど、いわゆる「バブル形式」のもとで大会期間中を過ごすことになった。
その中に羽生もいた。全日本選手権から約3カ月、それまでと同様に、かたわらにいるはずのコーチが不在の中、1人で練習を重ねて迎えた大会であった。
3月21日にストックホルムに到着した羽生は公式練習を経て、25日、ショートプログラムに臨んだ。
曲は『Let Me Entertain You』。その滑りは「華麗」という言葉そのものだった。腕を組み、表情を決めたスタート、指差しのポーズ……。観る者を誘うようなその振付は、無観客であることを忘れさせる華やかさに満ちていたし、観客席で見守ったボランティアらの歓声が彩りを添えた。
全日本選手権ではスピンの1つがノーカウントとされた。そこもしっかり修正を施し、パーフェクトな演技でフィニッシュ。得点は106・98点。自身の持つショートの世界記録を超えても不思議はない滑りを見せた。
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