
中央大学6連覇 1959-1964
「負けた時の言い訳ばかり頭に浮かんだ4年時」
岩下察男 ——'64年卒業
誰にでもあった青春の永遠の更新、そのシンボルこそは輪状の細長い布である。やがて年齢を重ねて、あのころの青白き走者たちは悟る。逃げ場のないちっぽけな時空にこそ圧は高まり、感受性は研ぎ澄まされ、そこにある大きな普遍をつかまえられたのだと。
東京箱根間往復大学駅伝競走、箱根駅伝には偉大な連覇記録が残されている。レースの渦中のみならず、年度ごとに襷をよくつないだ集団だけが享受できる頂上体験だ。
勝った。勝った。勝った。最終学年は? なんとしても勝たなくてはならない。連覇に臨んだ者は箱根駅伝の恍惚と不安と振り返る充足のすべてを熟知している。
中央大学、6連覇。日本体育大学、5連覇。順天堂大学、4連覇。入学から卒業までの4年間を駆け続けた元ランナーを訪ねた。
宮崎空港にほど近い住宅地、日本で初めて5000mで14分を切った人は静かに暮らしていた。
岩下察男。72歳。古い陸上競技好きには懐かしい響きだろう。東京五輪出場のオリンピアン。そして1959年に始まる中央大学の箱根駅伝6連覇にあってV3からV6にかけて走り切った。3年生までが2区、最終学年は4区を担った。
ベージュのベストに白いシャツ、卓の上に律儀に手を組んで、そこに青いインコがチョコンと乗った。
「こんなものを記載してみました。赤く囲ってあるところが私の走った記録です」
手書きの小さな字でぎっしり4枚、駅伝の軌跡のみならず、自身の各種目記録の変遷や当時の練習法の考察などが記されている。そのまま再録すればこの項は完結しそうだ。
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