#1068
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「今もリフティングがすごく楽しい」小野伸二が語る“パノラマ映像”と「FWだったら」の仮定《引退発表・ロングインタビュー》

2023/09/30
その巨大な才能に見合ったキャリアではないのかもしれない。怪我に苦しみ、年齢を重ねてベンチを温める日も増えた。それでも、彼はひとりボールを蹴りはじめた幼き日と変わらない情熱と好奇心と笑顔で今もサッカーと戯れている。(初出:Number1068号[ロングインタビュー]小野伸二「今もリフティングをしているだけですごく楽しい」)

 小野伸二の辞書に「予定調和」の文字はないのかもしれない。

《ピッチに立ったら、遅いテンポで崩してやろうって考えますね。いまのサッカーはどんどん速くなっているから……》

 その口から紡ぎ出される言葉は、しばしば斜め上からやって来る。驚き、裏切り、想定外。その先に立ち現れるカオスが妙に心地いい。

《遅いから良いというわけじゃなく、相手と違うテンポで戦いたいんですよ。向こうのやりたいことをさせないために。ボールを失わない選手さえそろっていれば、それも十分に可能だろうと。もちろん、うまくいくかどうかはわからないですよ。ただ、リスクがあっても、新しい道を進みたい。同じことをやるのは面白くない、って思う性分なので。たとえ過去にうまくいったことであったとしても。第一、同じことばかりしていたら、見ている人に驚いてもらえなくなっちゃう。僕自身も驚きたいですからね。新しい発見を》

 Jリーグから今季の登録選手が公表された2月1日時点で北海道コンサドーレ札幌に籍を置く小野の年齢は43歳4カ月5日。いつの間にか日本のトップリーグ(J1)で最年長選手になっていた。

 1998年、高校サッカーの名門としてあまねく知られた清水商高からプロの門をくぐって四半世紀。最盛期の姿を知らない世代と一緒になって、今日もボールを蹴っている。それも楽しげに、軽やかに。

 十年、いや、五年ひと昔と言われるほど時の移り変わりが激しい時代。それはサッカー界も同じである。人材の裾野が大きく広がった日本にも卓抜した才能を持つ選手が続々と現れるようになった。だが、いまもって、こんな声があとを絶たない。

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photograph by Takuya Sugiyama

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