「お久しぶりっ」
日本復帰初戦となる大分トリニータ戦の前日練習、ピッチに上がる直前に目が合うとわざわざ近くまで歩み寄り、握手を交わした。顔を合わすのは2年ぶりだが日焼けした表情は以前よりも精悍さを増し、張り付いた練習着の上からは身体がかなり絞れている様子が窺える。
「また、あとで」
小走りでピッチに入るとドームの芝の感触を確かめるようにボールを蹴り、ダッシュを繰り返した。FK練習ではペナルティボックスの左端からゴールを決めた。傍で見ていた鈴木ウリセス通訳が「モノが違いますね」と、感心するように呟く。
練習後、財前恵一監督が口を開いた。
「経験のある選手なので何も心配はしていない。ゲームではボールを動かし、コーチングでもチームを引っ張ってほしい」
チームに合流して1カ月程度。指揮官も絶大の信頼を置いている。
注目はピッチ上だけではない。
J1に定着しきれず、財政難に悩む札幌の“英断”。
デビュー戦となる試合の前売は好調で関連グッズの発売も決まった。この日も練習後にローカル局の生放送に出演した。
北の大地が小野伸二で揺れていた。
“天才がサッポロにやってくる”
そのニュースが流れたのは、今年1月のことだった。オーストラリアのウエスタンシドニーとの契約が5月に終了し、6月からコンサドーレ札幌に小野伸二がやってくると報道されたのだ。
札幌は、1998年にJリーグ加盟後、J1での経験は5年間だけ。2年連続で残留したのは2001年と2002年のみで、あとはいずれも1年でJ2に降格している。昨年、OBの野々村芳和が社長に就任、パスサッカーをチームコンセプトに据えたが8位に終わり、J1昇格を果たせなかった。財政難からチーム作りを若手主体にシフトチェンジし、半数が24歳以下の選手になった。
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