サッカーの戦術は、神学論争や哲学によく例えられる。誰もがイデア(理想)を希求し、幾多の思考実験や激しい論争を繰り返しながら、結果的には弁証法の如き発展を遂げてきたからだ。
近年のサッカー界では、既存の理論体系や用語法自体を解体して再定義する動きが顕著だが、これも哲学史の足跡に重なり合う。イタリア人サッカー指導者であるバルディと、日本人ジャーナリストの片野による本書は、同種のアプローチに則って、最先端の戦術と戦術論議を解き明かそうとする意欲作だ。
まず両者は、選手の役割が流動化したと指摘。チーム作りのモチーフも「スペシャリストの時代(特定の戦術と選手を紐付ける方法)」から、「駒の時代(戦術の枠に選手を当てはめる発想)」、「タスクの時代(選手の役割に基づきシステムを決める手法)」に変遷してきたと喝破する。
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photograph by Sports Graphic Number