“観る将”のみならず、プロでさえも不思議と引き込まれてしまう。その指し手はこれまでの将棋とは一味違う魅力を放っている。彼が操る駒の躍動を、同じ土俵で戦う棋士はどう見るのか。タイトル経験者の2人がその本質をズバッと見極めた。
盛夏の午後――。名人3期の佐藤天彦九段と王座1期の中村太地七段が顔をそろえた。将棋を生業にしているとはいえ、縁側で将棋を指すという滅多にない機会に自然と頬が緩んだ。夏空に気持ちいい駒音を響かせながら、語り合うテーマはもちろん大注目の若武者のことである。
中村 久しぶりですね。2年ぶりくらい?
佐藤 そんなになるのかな。
中村 対談となると少し緊張しますね。普段から棋士は感情の起伏が分かりづらいと言われたりしますけど、なるべく平気な顔をしておきます(笑)。
佐藤 確かに(笑)。僕らは同世代より一足先に社会に足を踏み入れている分、若い頃から落ち着いて見られることが多かった。藤井聡太さんの立ち居振るまいとか言動も世間では驚かれていますね。
羽生さんに憧れて棋士になった。
中村 17歳くらいの頃、天彦さんにVS(1対1の練習対局)をやってもらって、対局の合間にお互いの高校生活の話をした記憶があります。席替えの話とかを(笑)。普段はゆったりしてるけど盤上では凄まじいというところは、藤井さんと天彦さんは似てると思うんですよ。
佐藤 確かに藤井さんもゆったりしたところがありますね。実はユーモアもありそう。
――藤井二冠は今年、17歳で初のタイトル戦を経験されました。中村七段は2012年、佐藤九段は2015年のタイトル戦が初挑戦でした。
中村 羽生(善治)さんに憧れて棋士になったので、憧れの人とタイトル戦を戦えるワクワク感が強かったです。
佐藤 太地さんはタイトル挑戦が24歳か。早いですね。
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photograph by Kazufumi Shimoyashiki