鮮烈な連続KOから一転、フルラウンドの死闘で勝利を奪ったドネア戦。それは想定外だったのか。井上が語った「KO論」から、苦戦の裏にあった緻密かつ冷静な準備と戦略が見えてくる。(初出:Number990号<ロングインタビュー>井上尚弥「勝利とKO本能と」)
1年に及んだWBSSトーナメントを優勝で締めくくった井上尚弥が、勝者の証である巨大なアリ・トロフィーを高々と持ち上げる。勝利者インタビューでマイクを向けられると、「ドネア選手、めちゃくちゃ強かったです」とまずはフルラウンド拳を交えたライバルへのリスペクトを口にした。
WBSS決勝までの井上の戦績は18勝16KO無敗。直近の3試合で要したラウンド数は1、1、2なのだから、今回もKO、しかも早期KOを予想する声が多かった。その意味ではノニト・ドネア戦の判定決着は「予想外」と言えるかもしれない。
ただ井上本人は、試合前に行ったロングインタビューで次のように断言していた。
――さて、ドネア戦です。互いにハードパンチャーで、KO決着必至と言われていますが、本人としてはいかがでしょうか。
「KOは狙っていきませんね」
――ではKOとは真逆に渋い技術戦を見せるとか?
「見せたいですよ。意外とドネアみたいな相手のほうがそういう試合を見せられるような気がするんです。一発のパンチ力があって、とても危険な相手ではありますけど、技術もあるし、自分の良さが一番出せるんじゃないか、と思っているんです。楽しみですね」
ある意味で、井上の“予言”通りになったドネア戦を、「KO」をテーマに聞いたそのインタビューを軸に、振り返っていきたい。
井上があげた4つのKO。
――今回のメインテーマはKO。特集タイトルは「KO主義」です。
「自分の場合はKO“主義”ではないんですけどね(笑)」
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photograph by Akira Matsuo