あの年、悲しみの日本に奇跡の花が咲いた。「なでしこ」は一躍、競技の枠を超えた。
だが、彼女たちはその渦中、葛藤を抱きながら戦っていた。澤穂希から主将を引き継ぎ、最も重圧を背負ったであろう背番号8。表舞台から姿を消していた彼女が口を開いた。
だが、彼女たちはその渦中、葛藤を抱きながら戦っていた。澤穂希から主将を引き継ぎ、最も重圧を背負ったであろう背番号8。表舞台から姿を消していた彼女が口を開いた。
「恐怖ですね。ロンドン五輪後の銀座のパレードで大勢の方々に喜んでもらったあの時だって。正直、充実感と達成感を上回る、重圧があった。『ここからどんな世間の渦に飲み込まれていくんだろう』という。だから、W杯優勝後は手放しで喜ぶことはもうなくなりました」(宮間あや)
誰も知らない、未踏の地に彼女たちは立つことになった。快挙。サッカー界では途上国に分類される日本が、初めて世界の頂点に上り詰めた。
男子の日本代表も当然成し遂げていない、W杯優勝という歓喜の瞬間を迎えた。2011年夏のことだった。日本列島は、まだ活気を取り戻せずにいた。3月に起きた東日本大震災。国民はもう一度視線を上向きにできるニュースを待っていた。そこに届いたのが、なでしこジャパンのドイツW杯制覇の報せだった。決勝戦で追撃の1点目を挙げ、澤穂希が決めた同点ゴールをアシストしたのが、宮間あやだった。
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