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実体験をもとに綴られた、歴史作家の古武術エッセイ。~王貞治と刀の関係性にも通ずるエピソードの数々~

2017/01/23

 剣豪小説ではない。著者が戦中の少年時代から戦後の青年時代を通して続けてきた剣道修行の回想に、作家になってから取材で接した古武術各流派の宗家との親交と著者自身の入門、体験記が加わる。これに、それぞれの流派の特徴、名を遺す剣客、剣豪、合気道ならば名人・達人の挿話が一体になって語られる。著者の剣豪小説の素地となった興味尽きない古武術エッセイだ。

 刀の操作、扱い、身体の動き、著者の筆は常に具体的だ。例えば、刀の柄を握るポイント。「左手に七割の力をこめ小指で柄頭(つかがしら)を包み込むように」、「右手は三割の力でやわらかく持つ」。そして「手拭いを両手で絞る要領」で柄を握りこむ。刃筋を左右に揺らさないためだ(中村流抜刀道・中山泰三郎)。「刃筋」が揺れるとうまく切れない。

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photograph by Sports Graphic Number

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