草原ははるか遠くへと続く。少なくともそう映る。土俵には限りがある。土を詰めた俵で囲われた競技の場は大男には窮屈なほどだ。
白鵬、先の九州場所において32度目の優勝。かの大鵬と並ぶ史上最多記録を達成した。
雄大なモンゴルを故国とする横綱は、島国の小さな土俵、その有限なる空間を無限に使う。だから負けない。キーワードは「吸収」である。
身長が192cm、体重は157kgの堂々たる体躯、あらゆる譲歩を拒むような鋭い視線、不機嫌と紙一重の張り詰めたオーラは無慈悲のイメージを発散する。ただし、取り口は腕力と闘争心に頼ろうとしない。むしろ柔らかく吸い込むのだ。そのことで狭い土俵に自在を得る。
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photograph by KYODO