種牡馬の実質的なデビューは、例外なく初供用から3年後。初産駒が競走年齢に達するまでの短くない期間で、評価は乱高下するのが常だ。不世出の種牡馬の名をほしいままにしたサンデーサイレンス('02年没)でさえ、生まれてきた子供の多くが一見力強さが足りない後駆の形(専門用語で、飛節の折りが深すぎる、と言われた)をしていたことを突っ込まれ、不評を招いたものだ。
ハービンジャー(牡8歳、英国産、9戦6勝、父ダンシリ、母の父ベーリング)は、'10年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英国アスコット競馬場、芝12ハロン、GI)をレコードで圧勝。しかもアイルランドダービー馬のケープブランコ、英国ダービー馬のワークフォースらに11馬身という、同レース史上最大の着差をつけた名馬で、レーティングは史上5位の135ポンド。フランケル、シーザスターズと並ぶ、近年の欧州トップスターだった。これほどの馬が初供用から日本に来たのは、キングジョージのあと左前脚の管骨を折る重傷を負ったことと、2400mより短い距離での実績がなかったこと。欧州の生産界でも「重たそう」と思われた馬が、日本の軽い馬場に適性が見込めるかどうかについては、当然のこととして賛否両論があった。
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photograph by NIKKAN SPORTS