彼女は、なぜあんなにも遠くまで飛べるのか? 今シーズンも破竹の勢いで女子ジャンプのワールドカップ優勝記録を塗り替え続ける高梨沙羅。ライバルであるもう1人の「サラ」ことサラ・ヘンドリクソンの不在があるものの、高梨の安定したフォームと精神は、他の選手の追随を許さない境地に達していることは確かだ。宙に舞う美しいジャンプ。
ジャンプ競技とは飛び出す時にロスをせず、浮力と揚力を使っていかに「落ちないか」を競うスポーツらしい。「跳ぶ」より「浮かぶ」というわけだ。
高梨沙羅の飛躍の土台は、パイオニアたちの情熱だった。
本書は、かつては、男子のみのスポーツだったスキージャンプがどのような来歴を経て今に至ったのかを示す。そこには、高梨ら若手女子選手たちが追い掛けた先輩ジャンパーの背中が、毅然とした存在感を放っていた。女子ジャンプ界のパイオニア山田いずみ。長野五輪のテストジャンパーを務めた葛西賀子。知られざる情熱の系譜が、そこにはある。
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photograph by Ryo Suzuki