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「彼には背中を見せたい相手がいる」西純矢が抱いた“野手転向”への葛藤と先輩の「お前は恵まれている」の重さ《阪神タイガースの元エース候補》

2026/08/11
背番号120のユニフォームを身につける西
昨秋、阪神の元エース候補が野手転向を決断した。エリートコースを走り続けてきた彼はなぜ、育成選手の象徴である3桁の番号を背負ってもなお、戦場に立ち続けるのだろうか――。(原題:[ドラ1野手転向の舞台裏]西純矢「最速130キロに別れを告げて」)

 どす黒い曇り空に割れ目ができ、強烈な西日が差し込んできた。どうやら近畿地方では間もなく梅雨が明けるらしい。

「実は今日、関東に住んでいる弟が試合を見に来るんです」

 彼は夏本番の季節到来を先取りするかのように、カラッと晴れやかな笑みを浮かべてナイターの準備を急いだ。だいぶ体が絞れた影響もあるのだろうか。球場に向かう足取りは以前と比べて軽やかに映った。

 7月7日の夕刻。兵庫県尼崎市内にある阪神電鉄の大物駅から縦じまのユニホームが行列を作っていた。徒歩5分先には阪神の二軍本拠地がある。この日の広島戦では左手首を骨折していたリードオフマン、近本光司の実戦復帰が見込まれていた。

 午後6時、プレーボールが告げられた。同じ時間帯に東京ドームで一軍の巨人――阪神戦が開催されているというのに、尼崎の内野席は2829人の観客でパンパンだ。報道陣の人数も優に40は超えている。

 ただ、現実は時に残酷だ。弟も駆けつけた七夕の夜、西純矢は試合開始から終了までの2時間43分の間、一塁ベンチから声を嗄らし続けるしかなかった。近本の一挙手一投足に拍手が沸き起こるたび、舞台に上がれない体がうずく。すっかり細くなった背中では横幅が狭くなった分、2桁から3桁に膨らんだ番号が余計に目立っていた。

 彼が背負う番号はもう15ではない。

 背面いっぱいに広がる120という数字が、まるで重しのように幅を利かせて、元エース候補の現在地を主張していた。

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photograph by Asami Enomoto

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