どす黒い曇り空に割れ目ができ、強烈な西日が差し込んできた。どうやら近畿地方では間もなく梅雨が明けるらしい。
「実は今日、関東に住んでいる弟が試合を見に来るんです」
彼は夏本番の季節到来を先取りするかのように、カラッと晴れやかな笑みを浮かべてナイターの準備を急いだ。だいぶ体が絞れた影響もあるのだろうか。球場に向かう足取りは以前と比べて軽やかに映った。
7月7日の夕刻。兵庫県尼崎市内にある阪神電鉄の大物駅から縦じまのユニホームが行列を作っていた。徒歩5分先には阪神の二軍本拠地がある。この日の広島戦では左手首を骨折していたリードオフマン、近本光司の実戦復帰が見込まれていた。
午後6時、プレーボールが告げられた。同じ時間帯に東京ドームで一軍の巨人――阪神戦が開催されているというのに、尼崎の内野席は2829人の観客でパンパンだ。報道陣の人数も優に40は超えている。
ただ、現実は時に残酷だ。弟も駆けつけた七夕の夜、西純矢は試合開始から終了までの2時間43分の間、一塁ベンチから声を嗄らし続けるしかなかった。近本の一挙手一投足に拍手が沸き起こるたび、舞台に上がれない体がうずく。すっかり細くなった背中では横幅が狭くなった分、2桁から3桁に膨らんだ番号が余計に目立っていた。
彼が背負う番号はもう15ではない。
背面いっぱいに広がる120という数字が、まるで重しのように幅を利かせて、元エース候補の現在地を主張していた。
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