#1115
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「100→0に減速する能力も非常に高い」河村勇輝はなぜ本場NBAを唸らせているのか?《佐々木クリスが4項目の「特徴」と「課題」を徹底解説》

NBA解説者の佐々木クリスが分析
3年目の本契約を見据えていた小柄な日本人は、なぜ1年目から通用したのか。「チーム環境」「得点力」「パス」「ディフェンス」の項目別に、解説者の佐々木クリスが河村勇輝の技術的特徴と今後の課題を分析した。(原題:[佐々木クリス解説]本場が唸った173cmのスキル)

1st Quarter Team Environment

追い風を呼んだ「徳」とグリズリーズ独特のシステム。

 河村勇輝選手は渡米前、1年目にGリーグ、2年目に2ウェイ契約、そして3年目に本契約を結び、チームの主力として活躍するといったように、数年先を見据えて挑戦する覚悟を明かしていました。

 しかし、いざ蓋を開けてみるとトレーニングキャンプとプレシーズンゲームでのアピールが実り、昨年10月には2ウェイ契約を締結。僕は当初、今シーズン中にNBAの舞台に立つ可能性は10~15%程度と予想していたのですが、ホップ、ステップの初期段階をすっ飛ばし、10月25日にはヒューストン・ロケッツ戦でのNBAデビューへとジャンプしました。

 河村選手のNBAデビューがこれほど早く実現したのは、いくつかの要因が重なったからです。昨秋にベテランポイントガードのデリック・ローズが引退したため、グリズリーズは新たなPGと契約する必要がありました。そんな中で2ウェイ契約ながらもレギュラーでプレーしていたのがスコッティ・ピッペンJr.です。彼が本契約に昇格したことにともなって、2ウェイ契約の枠に1つ空きが出た。それを河村選手が掴みとる形となりました。グリズリーズでプレシーズンから怪我による主力の欠場が続いていたことも、河村選手にとっては追い風となりましたね。

AFLO
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優等生キャラとは異なる、愛されキャラ

 ただ、偶然の状況が重なったとはいえ、それも河村選手が2ウェイ契約締結に値するようなパフォーマンスを見せていたからこそ可能となったのです。トレーニングキャンプ初日から積極的にエースプレーヤーに対して激しいプレスをかけ、サイズ不足が懸念されたディフェンスでもその持ち味をいかんなく発揮していました。また、コート内外で、PGとしてチームメイトやコーチらと積極的にコミュニケーションを取る姿勢も見られました。NBAに挑戦する海外の選手がぶつかる言語という障壁をものともせず、驚くべき速さでチームに溶け込み、周囲との絆を深める努力を惜しまなかった。とくに、グリズリーズの絶対的エース、ジャ・モラントとは親密な関係性を築くなど、日本で見ていた優等生キャラとは異なる、愛されキャラですっかりチームメイトたちの懐に入り、ファンも魅了しています。

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photograph by Getty Images

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