「昨年の予選会後に大学との話し合いの中で『監督としてはここまで』と言われて(退任することに)。その後、12月に入ったくらいですかね、徳本さんから『芝浦工業大学で一緒にやってみないか』と連絡をもらいました。(麗澤大学には)スカウトや職員として残る選択肢はあったんですけど、熱を持ってできるかと考えるとちょっと違うかなと。徳本さんとラーメンを食べながら『次は徳本さんと一緒にチャレンジしたいと思っています』と伝えました」
コーチ、監督として15年間指導した麗澤大学を2024年末に退職。翌2月から芝浦工業大学でキャリアをリスタートさせた山川は、一連の経緯をこう語り始めた。徳本の監督としての“移籍”が異例なら、監督からコーチに立場を変えての“移籍”もまた異例だろう。それでも山川は、その決断の背景や新たな挑戦への想いを、笑顔で、穏やかに話す。
「仕事はしないといけないし、ここまで関わってきた駅伝に携わる仕事が継続できればという思いはありました。その中で、最初に熱を持って話をしてくれたのが徳本さんでした」
中京大学出身で、学生時代は箱根駅伝に縁がなかった山川にとって、徳本はかつてテレビの中の人だった。96回大会、学生連合チームで山川が監督、徳本がコーチとしてともに戦った経験があるが、同じチームでの指導については「こんなことになるとは思っていなかった」と笑う。

「(声を掛けられたときは)嬉しいとかではなくて、このチームがどんなチームになるのかなと考えることになりました」
現実的な考えが頭をよぎるのは、山川自身が箱根駅伝への道のりの厳しさ、箱根駅伝予選会という舞台の残酷さを痛いほど知っているからだ。95回、96回大会予選会で2年連続次点。特に96回大会は、10位中央大学まで26秒差。1年間努力を積み重ねて、20km以上の距離を走って、一人2.6秒足りずに届かなかった。
「そういう勝負の世界なんだと、あの時にすごく感じました。そういうところを突き詰めてかないとたどり着けない場所なんだと——。1回目の次点は悔しかったんですけど、『自分たちやれるんだ』と、本当に近づいた感じがあったんです。でも2回目は、またもう1年この思いを持ってチャレンジしないといけないのか、と。『次の初出場は麗澤だ』と言われ続けて結果を出さないといけないっていう、そこにだんだん自分が疲弊じゃないですけど、擦り切れてたんじゃないかなと思います」
山川が“あと一歩”でもがく一方、徳本監督率いる駿河台大学は2度も本戦への出場権をつかみ取っていた。その徳本の誘いに「自分のこれまでの経験が生きるなら」という思いと、自分にはない“何か”を持つ徳本の下で学びたいという思いが湧いた。動画では、コーチという一歩引いた立場を選び、選手により近い場所でリスタートすることへの想いや、「正反対」という徳本監督とのコンビについても語っている。

芝浦工業大学にはどんな選手がいる?
「ここに残って箱根を目指すのか目指さないのか、まずそれを教えてくれ。速い遅いは関係ない、まずその想いがあるのかを教えてほしい」
徳本監督のこの言葉でチームは動き出した。始動して間もなくのチーム初戦、ADIDAS TOKYO CITY RUN2025(4月13日、神宮外苑)で早速手応えを感じた。公認5kmで出場13人中7人が自己ベスト相当をマークしたのだ。
「みんなやり方がわからなかっただけで、気持ちはあるんじゃないかと(感じていました)。一生懸命やるし、声出しも元気になったし、挨拶もすごく気持ちよくて。『これはもしかしたら上向いていくんじゃないか』と最初1週間やったっくらいで徳本さんと話したのは覚えています。(さらにADIDASのレースの結果には)自分も、徳本さんもめちゃくちゃびっくりして。能力もあるぞ、磨けば変わるぞと。練習をやっている選手が走れたのは、チームとしては大きかったです」
訊けば、練習メニューは山川も驚くようなものだという。インタビューでは練習のベースや、指導する徳本監督の熱、さらには家族のことにまで話が及んだ。そのほか、以下のことに触れている。
- 徳本監督は“熱”の人
- 駅伝チームにおけるコーチの役割とは?
- 麗澤大学での監督業を振り返って“めちゃくちゃ大変”
- 徳本監督の“意外な”一面とは?
- 「思ったより走れる」チームの中心選手
- 箱根駅伝予選会で「15位を目指す」理由
- 麗澤大学での2度の箱根予選会次点と学生連合チームの監督の経験
- “タツヤを漢に”のスローガン、結末は?
“あと一歩”を知る男が、監督ではなくコーチとして再挑戦するに至った決断の背景が語られているインタビュー、ぜひご覧ください。(5月7日取材)
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