勝敗に直結した重大なミス。自信喪失に陥っても不思議ではない。
しかし、3大会連続となるW杯最終予選に臨むこの男は、
やはり只者ではなかった。責任はもちろん感じている。
でも下を向いてはいられない。すぐそこに、次の戦いが待っている――。
不動のゲームメイカーが、代表に懸ける熱き思いを明かした。
後半26分だった。
ペナルティスポットには、遠藤保仁がいた。
「狙いは、右サイド」
PKを蹴る前から方向は決めていたという。スタジアムは異様な静けさとなり、重苦しい空気がピッチを覆った。
審判の笛が鳴り、遠藤が右足を振り抜いた刹那、大きなどよめきが起きた。一斉にヨルダンの選手たちがGKに駆け寄り、窮地を救ったGKの右手を称えた。突破を仕掛けPKを獲得した内田篤人はガックリと肩を落とし、キャプテンの長谷部誠は「まさか」という表情を浮かべた。遠藤は「嘘だろ」と両手を広げ、茫然と立ち尽くした。日本は、2-2の同点に追い付く決定的チャンスを逸したのである。
試合後、ピッチ上のあちこちでヨルダンの選手による歓喜の輪が生まれた。日本は引き分け以上でブラジル行きの切符を手にすることが出来たが、まさかの敗戦。
遠藤は一番最初に審判と握手を交わし、眉間に皺を寄せたまま苦々しい表情でロッカールームへと消えて行った――。
「自分がやらなければならない」気持ちで臨む3度目のW杯最終予選。
ヨルダンに勝てば、遠藤にとってドイツ、南アフリカ大会に次いで、3度目のW杯最終予選突破になるはずだった。
「最終予選はいつも、『早く突破できたらいいな』って思うけど、今までを振り返ると自分の立ち位置はそれぞれ違っていたよね。例えばジーコの時は、何も分からず代表に入って、チームで生き残ることだけを考えていた。ヒデ(中田英寿)さんやツネ(宮本恒靖)さんがいて、その人たちの後をくっついていけばいいかなって感じだった。南アフリカの岡田さんの時はもう中堅だったんで、代表としての重みも分かってきてたし、チーム内で何をしないといけないのかを理解してプレーしていた。
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