カカ、C・ロナウドといったスター選手を擁してもなお、レアル・マドリーが獲得にこだわった希代のMFは、いかにしてかの地で才能を開花させたのか。彼の育ったスペイン・バスク地方の都市サン・セバスチャンをたずねた。
10月のある土曜日、潮の引いた砂浜では十数人の若者たちがサッカーボールを追うのに夢中だった。
「今のはシュートじゃなくてパスだろ?」
FCバルセロナのユニフォームを着た青年が味方に文句を垂れる。その表情は真剣そのもの。ゴールは砂山を盛り、ラインは砂をえぐっただけの即席会場だ。そのためシュートは入ろうが入るまいが、ラインを越えたボールは波打ち際へと転がっていく。相手チームの選手が波に押し戻されたボールを拾い早足で戻ると、試合はおもむろに再開した。
スペイン北部に位置するバスク地方、ギプスコア県サン・セバスチャン市において、ビーチサッカーは伝統のひとつである。
貝殻を意味する「コンチャ」という名の海岸では2週間に一度、干潮の日曜日に8~11歳の少年チームが各地からバスで訪れ、トーナメントを開催している。10面ものピッチが用意され、11対11の試合が同時に行なわれる。潮が引いたビーチは水を多く含んだ場所とそうでない場所でボールの転がり方が異なるため、体のバランス力を養い、適応力を身につけるのに理想的だという。
その日、コンチャにいた若者たちは少年時代の習慣を続けていたのだろうか。
コンチャ海岸のビーチサッカーでセンスを培った。
砂浜では大人たちによる本格的なビーチサッカーが行なわれていた
今季開幕前、スター選手を掻き集めたレアル・マドリーが“最後のピース”として獲得に踏み切ったシャビ・アロンソは、紛れもないコンチャ出身の選手である。
彼は6歳から11歳までビーチサッカーに親しんでいる。ギプスコアには、「12歳までは少年少女が各種スポーツを選択する自由を与え、学校、ユースの試合活動を禁じる」という条例がある。
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photograph by Agence SHOT