濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
着実に客足を伸ばしてきた、
26年目のシュートボクシング。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byChiyo Yamamoto
posted2011/03/03 10:30
KO勝利を収めた鈴木悟(写真左)は元ボクシングの日本ミドル級王者であり、K-1に参戦した経験を持つ。対する弘中邦佳は柔道、柔術をベースとした現CAGE FORCEライト級王者である
創設26年目となるシュートボクシングは、いま大会を重ねるごとに勢いを増している。
好調の要因の一つは、女子部門のエースであるRENAがアイドル的ルックスもあいまってブレイクのきざしを見せていることだ。
彼女は一昨年、昨年と女子トーナメント『Girls S-cup』で優勝。活躍するにつれてメディアの注目も高まり、テレビのドキュメンタリーやバラエティ番組で目にすることも珍しくなくなっている。
垣根が取り払われた、MMAとの交流。
もう一つは、MMAとの交流が本格化してきたことだ。
2月19日の後楽園ホール大会にも、弘中邦佳、大澤茂樹と二人のMMAファイターが登場。弘中は金網イベントCAGE FORCEのチャンピオンであり、大澤はレスリング世界学生選手権優勝のベースを持つSRCの成長株だ。ケガで欠場したものの、当初は修斗世界王者の漆谷康宏も出場予定だった。
もともとシュートボクシングは、打撃だけではなく投げ、スタンディングのサブミッション(絞め・関節技)を認めた“立ち技総合格闘技”である。そのことを競技面だけでなく興行面でも大きく打ち出すことが、成功につながった。MMAファンにも名の知れた選手が出場することで“シュートボクシング=立ち技=打撃系”というイメージを覆し、ファン層を拡大したのだ。
もちろん、総合格闘技と立ち技総合格闘技は違う競技だ。MMAファイターも打撃勝負は避けられないし、打撃系格闘家が組み技に対応する必要も出てくる。その結果、シュートボクシングのリングでは他ジャンルにない攻防が見られることになる。
未だロマンを誘う、異種格闘技の一戦。
象徴的だったのは、この日のセミファイナルだ。金網王者の弘中に対峙したのは、元ボクシング日本王者の鈴木悟。金網王者vsボクシング王者の異色対決だ。
ただし、弘中は初参戦となった昨年2月の黒木信一郎戦でパンチによるKO勝利を収めている。対する鈴木はシュートボクサーである宍戸大樹、梅野孝明との試合で投げによるポイントを奪取した実績を持つ。二人の闘いでは“ボクサーが投げ、MMAファイターがパンチで倒す”という展開も予想できたのだ。そこにシュートボクシングの独自性と緊張感があった。