濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
着実に客足を伸ばしてきた、
26年目のシュートボクシング。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byChiyo Yamamoto
posted2011/03/03 10:30
KO勝利を収めた鈴木悟(写真左)は元ボクシングの日本ミドル級王者であり、K-1に参戦した経験を持つ。対する弘中邦佳は柔道、柔術をベースとした現CAGE FORCEライト級王者である
“金網王者vsボクシング王者”の結末は……。
試合開始のゴングが鳴ると、まずは弘中が先制してみせた。鈴木の背後に回るとバックドロップ。しゃがみ込んでディフェンスしようとする鈴木を強引に持ち上げての一発である。さらに弘中は鈴木をロープに詰めてパンチを連打。だが、鈴木はガードを固めながら弘中の動きを読んでいた。抜群のタイミングで放たれた右ストレートで弘中がダウンする。続く追撃の右で、レフェリーは試合を止めた。
1ラウンド1分55秒、鈴木のKO勝利である。
弘中は投げで主導権を握り、パンチで倒しにかかった。鈴木は投げられても気持ちを乱すことなく、逆転のチャンスをうかがっていた。寝技があったら、弘中の圧勝だっただろう。反対に打撃だけなら、鈴木の勝負強さが際立つことはなかっただろう。“金網王者vsボクシング王者”の対戦は、シュートボクシングだからこそ好勝負となったのだ。
ブームに左右されないシュートボクシングの独自路線。
異色対決の話題性は満足感へとつながり、そのことはシュートボクシングのバリューをさらに高める。絵に描いたような好循環だ。ブームが去ったと言われて久しい日本格闘技界だが、シュートボクシングはブームに関係なく独自路線でファンに支持されている。
「本日の入場者数は2385人、満員となりました」
大会終了後、インタビュースペースに集まった報道陣にスタッフがそう告げた。声が弾んでいるように聞こえたのは筆者だけではないだろう。