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《マラソン日本記録保持者》大迫傑35歳が語る”静かな熟成”とは?「ネガティブな言葉をいかにポジティブに捉え直せるか」
text by

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byKanta Nakamura
posted2026/10/08 11:00
昨年、マラソンの日本新記録を樹立し、今年35歳となった大迫
「僕は『なぜ次のマラソンを走るのか』を、自分の中に落とし込んで、納得感を持って走りたいタイプなんです。自分で自分の“ストーリー″を創って、それに入り込みたい。今回もそのストーリーの芽を探していました。自分は若くはないし、スピードは20代前半の頃に比べると出なくなっている。けれど、実感として一昨年より去年、去年より今年のほうがトレーニングできているんです。その理由を考えても僕の思考だけじゃうまく言葉にならなかったので、AIと壁打ちをしていたところ、そこで『枯淡』という単語が出てきたんです」
枯淡。辞書的な意味は「俗世間の名誉や利益にとらわれず、あっさりとしていながらも深い味わいや趣があること」。水墨画などの絵や文章の形容としても使われる。
最高峰の競技者が、なぜ枯淡なのか。
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「それぞれの漢字は<枯れる>だったり<淡泊、淡い>と地味ですけど、でも熟語として組み合わさった時に静かな強さ、静かな熟成といった響きがあるように感じました。僕の競技における『熟成』のイメージと自然に一致するな、と」
さらにこう続けた。
「<枯れる>は外側から見るとネガティブなイメージ。でも、内側に眼を向けて<凝縮>と考えると非常にポジティブになる。この逆説的な表現というか、ネガティブに捉えられる言葉を自分の中でいかにポジティブに捉え直せるか、これはいかに年齢を重ねた今の身体を使って成長していくかという思考とも重なったんです。表向きのイメージと実際の中身を反転させていくのが自分らしいな、と」
なぜ走るのか
なぜ走るのか──この根源的な問いに対して、名誉欲、金銭欲由来の表面的な答えではなく、自分の内側から答えを見つけ、それを「テーマ」に据える。
「良い記録で走るだけじゃなくて、そこに自分のメッセージを乗せ、いかに共感者を増やせるか。そんなことを考えています」
大迫傑、35歳。過酷な競技で世界の最前線で戦い続ける男から価値を創るクリエイターの香りが漂ってきた。
Sports Graphic Number 1153
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