博多の人・王貞治BACK NUMBER
「先祖の墓は、どこにあるんだ?」王貞治が謎の質問をした不振の開幕投手の“強気伝説”とは?「危険球ルールを変えたのは、俺だから」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byKoji Asakura
posted2026/09/29 11:07
開幕戦で好投したが、その後成績が上がらない西村龍次に王は驚きの声をかける。西村は期待されれば絶対に応えたいという強気の男だった
「いいピッチングをしても勝てない、そういうのが何回か続いたんですよ」
4月10日の近鉄戦、同16日のオリックス戦と連勝。しかし、同22日の近鉄戦は3回6失点降板で2敗目を喫すると、西村の調子が下降線を描き始めた。
4月29日の日本ハム戦は2回3失点で降板、5月5日のオリックス戦は5回途中3失点で3敗目。5月13日のロッテ戦、同20日の日本ハム戦はいずれも5回1失点、同27日のロッテ戦も5回途中1失点降板と、先発ローテは守っているものの、6試合連続で白星に見放されていた。
王からまさかの質問が
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どこかもどかしい思いを抱えていたその頃、西村は王に呼ばれた。
「先祖の墓は、どこにあるんだ?」
突拍子もないその問い掛けは、王なりの気遣いだった。相手のエース級との投げ合いや、打線との兼ね合いもあって、どうしても勝ち星に恵まれない。
「だから、お前が悪いんじゃない。運気だ」
それも“王理論”なのだろうか。少々面食らった西村だったが、先祖代々の墓が故郷の広島・呉にあると答えると「じゃあ、先祖のお墓参りに行ってこい」。
シーズン中では異例の“里帰り指令”だった。
「きれいにお墓の掃除をしてこい。練習は来なくていいから」
西村はシーズン中でありながら、チームを離れて、王の指令通りに墓をきれいに磨き、ご先祖さまに手を合わせてきたのだという。
すると、6月3日のオリックス戦では8回3失点の好投で3勝目、続く同10日の日本ハム戦も7回途中2失点と踏ん張って4勝目を挙げた。
理屈を超えた金言
「これって、すごいでしょ」
理屈を超えた“王の金言”には、西村と一緒に、取材中の私も思わず「それはすごい」とうなるしかなかった。
その後、右肘を痛めた西村は、1999年の後半戦に登板していない。日本シリーズも投げられないままで、シーズントータルでは、オール先発で11試合登板、4勝3敗、防御率4.34、投球回数も58にとどまった。開幕投手といえば、その年の「エース」の期待を背負う役割ともいえるだけに、この成績では少々、物足りなさが目立ってしまう。

