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審判たちの甲子園BACK NUMBER
「甲子園が揺れている」2009年“伝説の決勝”審判たちが感じていた異様な雰囲気…「下を向いている子がいない」勝ち負けを超えた「終わらない夏」の終焉
posted2026/08/14 06:01
2009年夏の甲子園決勝、激闘を終えた中京大中京と日本文理の選手たち。勝者にも敗者にも笑顔があった
text by

安藤嘉浩Yoshihiro Ando
photograph by
Hideki Sugiyama
◆◆◆
9回表、2死走者なし。10-4とビハインドを背負った日本文理の打順は5巡目に入り、1番の切手孝太がフルカウントから四球を選んだ。
スタンドが沸く。
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6点差がある。走者が1人出ただけだ。それでも、スタンドが沸いた。
「なんか、中京大中京がアウェーになってるな」
二塁塁審の田中豊久は広い阪神甲子園球場のほぼ真ん中に立ちながら、そんなことを思っていた。甲子園でジャッジして6年目、46歳で初めて決勝の舞台に立っていた。
「球場が揺れている」塁審が感じた“異様な雰囲気”
中京大中京も大応援団に後押しされていたし、堂林翔太をはじめとする選手の力強く、さわやかなプレーがファンに支持されていた。
ただ、甲子園のファンは温かい。負けているチームを応援することがよくある。
日本文理の2番・高橋隼之介が右打席に入る。この試合は本塁打を含む3安打と当たっていた。
しかし、3球で追い込まれた。優勝まであと1球。その後、何度も、そういう状況は作られていく。
高橋はファウルで粘る。その間に一塁走者の切手が二塁盗塁を決めた。一塁側アルプス席の大応援がさざ波のように、球場全体に広がっていく。
5球目のスライダーを高橋のバットがとらえた。鋭い打球がレフト線上を伸びていく。
三塁塁審の野口敏行は頭上を通過する打球を追って背走しながら、一瞬、見失ってしまった。
「ヒヤッとしたのを今でも覚えています」
すぐに視界にとらえたボールは、ラインドライブがかかり、三塁側アルプス席に突き刺さった。
「最後まで気を引き締めていこうと自分に言い聞かせていましたが、もう一度集中し直そうと思いました」
高橋はさらに2球ファウルを打って粘った。そして、9球目をとらえると、打球は左中間を深々と破った。二塁から切手が生還し、5-10。なお2死二塁。
続く3番・武石光司も3球で追い込まれながら、2球ファウルで粘る。そして、7球目をライナーでライト線に運ぶ。タイムリー三塁打で6-10。
「球場が揺れている」
二塁塁審の田中はその中心で、異様な雰囲気がどんどん増していくのを感じていた。

