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審判たちの甲子園BACK NUMBER
「なんか嬉しかったな。これが高校野球や」9回2死、6点差でも日本文理は“諦めていなかった”…2009年の奇跡「終わらない夏」を体感した審判たちの証言
posted2026/08/14 06:00
2009年、夏の甲子園決勝。中京大中京と対戦した日本文理は、6点差の9回2アウトから驚異の粘りを見せた
text by

安藤嘉浩Yoshihiro Ando
photograph by
Hideki Sugiyama
◆◆◆
第91回全国高校野球選手権大会の決勝戦は、中京大中京(愛知)が10-4と6点をリードし、9回表を迎えていた。日本文理(新潟)の最後の攻撃も簡単に2アウト。中京大中京の優勝まで、あと1アウトとなった。
2009年8月24日、阪神甲子園球場は4万7000人の大観衆で埋まっていた。
「なんか嬉しかったな。これが高校野球や」
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球審として、ここまで試合を運営してきた日野高が、ふと一塁側ベンチに目を向けると、日本文理の背番号「1」、伊藤直輝がキャッチボールをする姿があった。
「えっ」と思った。味方が同点にするか逆転し、自分が9回裏もマウンドに上がる可能性を信じて、肩慣らしをしているのだろう。
「そうは言うても、6点差やで。ふつうはないよな。でも、なんか嬉しかったな。これが高校野球や、と思った」
三塁塁審の野口敏行は、不思議な感覚に陥っていた。
27歳で審判員となり、38歳から甲子園大会でもジャッジするようになった。当時45歳。決勝の舞台に立つのは初めてだった。
野口は一塁側の内野席、アルプス席と正対する場所に立っている。
「すごい応援やなあ。日本文理の応援席は最後まで一生懸命や」
点差は6点もある。しかも、簡単に2アウトをとられた。ふつうなら、負けているチームに悲壮感が現れるし、球場全体が沈みがちになる。「これが決勝なのかな」と思った。
「まるで1点差か同点のような雰囲気がありましたからね。今から思えば、結果論かもしれませんが、簡単に終わる感じがない。そういう雰囲気があったように思います」
日本文理の1番を打つ切手孝太は追い込まれながらも、スライダーを2球見極め、四球を選んだ。
「終わらない夏」というフレーズとともに伝説となる、日本文理の猛反撃が始まった。

