博多の人・王貞治BACK NUMBER
「優勝? えっ? みたいな雰囲気で」王貞治ホークス苦難の船出…響く怒声「君たちは、負けて悔しくないのか!」それでも王は“優勝”と言い続けた
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byNaoya Sanuki
posted2026/06/25 11:05
ついにスタートした王ホークス。しかし万年Bクラスのチームの雰囲気は、王といえども簡単には変えられなかった
小久保は、当時のチーム状況をこう評した。
「前年、根本さんのとき、貯金があって、手応えもあったんで、FAで工藤さんや石毛さんが来て、大物の外国人とか入って来たんで、出だしはそんな悪い感じじゃなかったんですよ。優勝が狙えるかもしれんな、という雰囲気ではありました。ただ、負けが込んできたらやっぱり、いろんなところでくすぶっているものが表面に出てくるじゃないですか。あの年には、そういったところがありましたね」
6月の7連敗をはじめ、9月下旬から10月1日の最終戦にかけて引き分けをはさみ6連敗、5連敗も4度を数えた。負け出したら止まらない。歯止めが利かないのは、目標を失い、チームとして戦えない状況になるからだろう。1995年がプロ4年目、その前年の94年には10勝を挙げていた右腕・若田部健一(現ソフトバンク1軍投手コーチ)も「簡単に言えば、同じところに向かって、チームが行ってなかった」と表現した。
優勝? えっ? という雰囲気
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「だから、優勝なのか、日本一になるのか。そういうところが確かに薄かった、というのが当時ですね」
みんなで、この目標に向かって、というのが?
「なかったですね。『優勝』というようなフレーズが全くなかったんです。逆に『優勝』みたいな話をすると、えっ? みたいな、そう思われるような、そういう雰囲気もあったような時代でもあった、と思うんです」
王は負けた試合後、必ず選手全員を集めてのミーティングを行った。
「君たちは、負けて悔しくないのか」
その怒声も、当時の“弱いホークス”には響かなかったのだろう。負けた試合でも、自分が3安打を放っていれば、試合後のロッカーで饒舌になるベテラン選手がいた。試合が始まる前に、試合後、どこにご飯を食べに行こうかと大声で話し合っている選手たちがいた。
王には、その“欠けている何か”が、はっきりと見えてきた。

