博多の人・王貞治BACK NUMBER
「優勝? えっ? みたいな雰囲気で」王貞治ホークス苦難の船出…響く怒声「君たちは、負けて悔しくないのか!」それでも王は“優勝”と言い続けた
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byNaoya Sanuki
posted2026/06/25 11:05
ついにスタートした王ホークス。しかし万年Bクラスのチームの雰囲気は、王といえども簡単には変えられなかった
「戦力的な差というのは、どのチームでも、セ・リーグでもパ・リーグでもそりゃあるんだけど、最後はやっぱり『思いの差』になってくると思うんだよね。勝ちたい、っていう思いの強さの差なんだ。僕はジャイアンツにずっといたから、12球団の中で一番強いチームにいて、ましてやV9も経験したりしたから、そういう思いは自分の中では当たり前みたいなところがあったんだけど、こっちへ入ってきたら、ああ、あれは当たり前だと思っていたのが、ジャイアンツだったからなんだ、というのに気づかされたよね。
結局、勝負も最後の最後まで行って、球際の強さ、っていうのかな。思いがちょっとあるから、グラブの先に当てれば外野へ打球が行かないから、点が入らないとか、そういう思いなんだ。ものすごい差じゃなくて、ちょっとした差なんだよね。そのちょっとした差が1年間やってみると、それなりの差になって、優勝争いするチームと、そうじゃないチームとの差になってしまうよね。ただ、やっぱりそれは言われただけじゃ分からないと思うんだ。それまでは『勝つ』なんて思いで、チームが動いていないわけだ、まず第一にね」
そのために、王は事あるごとに「優勝」という言葉を繰り返した。チームに、その思いをそれこそ刷り込ませていくことで、勝つという意識を高めなければならない。
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「やっぱり目的がないのはダメですよ。目的がなければ、体って動かないし、真剣にもなれない。だから、明確な目標をまず掲げて、それに向かってみんなで戦っていくんだ、っていうのが必要だったよね」
大物外国人獲得も機能せず
しかし、笛吹けど踊らず、とはこのことかもしれない。
王1年目の1995年は、1989年にメジャーの本塁打王にも輝くなど、来日前の時点でメジャー通算220本塁打を誇ったケビン・ミッチェルを、推定年俸4億円で獲得。4月1日の開幕戦、つまり王ダイエーの初陣となる一戦で、日本プロ野球史上2人目、開幕戦に限れば史上初となる「初打席満塁本塁打」を放つなど、パワーの片鱗を見せつけたが、その後は右膝痛を理由に練習を無断欠席、さらには治療を理由に球団の許可を得ずに無断帰国するなどのトラブル続きで、ミッチェルは結局、シーズン途中に解雇。開幕月の4月こそ14勝9敗と勝ち越したが、最終的には借金18の5位に終わった。

