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「キッカーのイスはチームにひとつ」NFLチームと契約も…ライバルはオールスター選手!? アメフト・松澤寛政が語る“日常のリアル”「朝5時半から夕方5時まで…」
text by

北川直樹Naoki Kitagawa
photograph byMatt Aguirre/Las Vegas Raiders
posted2026/06/11 17:01
ドラフト外でNFLラスベガス・レイダースと異例の3年契約を結んだ松澤寛政。現在はどんな日々を過ごしているのだろうか
こうした言葉を、松澤はいつもほとんど同じ言い回しで口にする。最初はメディア向けの定型句かと思った。だが、何度も話して分かったのは、彼が本当にそう考えているということだ。話術ではなく、思考の構造そのものなのだ。
20歳から自分の足で這い上がってきたはずの男の口から「自分の力で」という言葉はほとんど出てこない。
代わりに挙がるのは、大学受験に失敗して失意に暮れる松澤に「広い世界を見てこい」とアメリカ行きのチケットをくれた父の存在であり、「NFL選手になる」と決意して渡米した後、苦しいときに電話で励ましてくれた母の存在である。コーチや仲間、そしてスタンドで彼のTシャツを着るファンの存在も大きい。
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自分を信じることと、誰かに支えられていることに感謝すること。その2つが、松澤の中では何の矛盾もなく同居している。
松澤はいま、どの日本人選手も届かなかった世界の、ほんのすこし手前に立っている。用意されたイスはひとつだけ。厳しい道には違いないが、少なくとも過去の日本人が見えなかった景色が、朧気ながら見える場所まではやってきた。
かつての自分に伝えたい言葉…「なんとかなるよ」
だからこそ、取材の最後にふと聞いてみたくなった。
――アメリカに来る前、夜の公園でひとりでボールを蹴っていた時の自分へ、伝えたいことはある?
松澤は一瞬だけ遠くを見て、笑った。
「なんとかなるよ、って。あとは『人生、楽しんで』かな」
まだ、何ひとつ決まっていない。保証は何もない世界で、彼はそう言って笑った。

