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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「コノヤロー! って怒鳴りあいながら…」長嶋茂雄さん一周忌に中畑清が思い起こす“本当に幸せだった時間”「長嶋さんは千の風になったんです」
text by

赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph bySankei Shimbun
posted2026/06/03 11:00
長嶋さんが亡くなって早くも1年。弟子を自任する中畑氏が一周忌を前に思い出を語ってくれた
先駆的だったメンタルトレーニング
長嶋監督は中畑氏の弱気な性格を見抜いたのか、秘かに「メンタルコーチ」の指導を受けさせた。気持ちの上でしっかりと「切り替え」ができるよう、当時はまだ珍しいメンタルトレーニングを課したのだ。これまで知られていなかったミスター流の“心の鍛錬”を、中畑氏が明かす。
「私がまだレギュラーになる前、結果が出ないことに苦しんでいる頃ですよ。シーズン中、名古屋遠征の時、チームの宿舎だった都ホテルの部屋に、長嶋監督がメンタルコーチの先生を連れて来て、お二方と私の2対1で、つきっきりで指導していただきました。
そこでミスターと先生に教え込まれたのは、自分の潜在能力をコントロールして、いかにして勝負の一瞬、一点に集中して発揮するか。いざという時に火事場の馬鹿力を引き出せるかです。『マイナス思考の要素を全部頭の中から取り払え』『自分が大活躍しているシーンを思い浮かべてプレーしろ』と何度も言われて、一所懸命イメージトレーニングをやった。当時、精神を集中して振り下ろせば、名刺1枚でも割り箸をポキッと折ることができる、という精神修養の専門家もいた。それぐらい気持ちを強く持ってプレーしろと教えられたんです。
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メンタル面の指導を受けて、自己暗示をかけるというか、前向きな気持ちを作れるように、普段の生活も変えました。例えば、寝る前に5分間、自分が大活躍しているシーンを妄想する。自分で実況生中継やってね、『1-1と同点で迎えた9回裏、中畑、打ちました! サヨナラスリーラン!』そうやってハイになったら、翌朝スッキリと目が覚めて、次の日に火事場の馬鹿力が出たりするんだよ」
特打ちで”ひとり実況”をしていると……
中畑氏は宮崎キャンプでも自己暗示をかけるため、“ひとり実況”を繰り返した。チームの全体練習でそんなことをしたらコーチや先輩にうるさがられるから、居残りで特打をやっている最中に。
「鳥カゴ(打撃ケージ)の中に入って、実況生中継をしながらバットを振るんですよ。『9回、中畑、打席に入りました。打った、打った! 入った、入った! 逆転満塁サヨナラホームラン!』って。
そうしたら、いつの間にかミスターが俺の練習を見に来ていて、鳥カゴの後ろから『キヨシ、今のは入ってないんじゃないか』ってツッコミを入れてくるんだよ(笑)。そこで俺も『いや、今のは追い風が吹いてましたから』、するとミスターも『そうか、追い風なら入ったかもしれないな』って(笑)。
ミスターについてきていた記者まで、みんな爆笑だよ。俺、後ろにみんながいることも全然知らないで、一所懸命、延々と自分で実況生中継やってたんだよな(笑)。そんなふうに、俺がまだ主力になる前から、長嶋さんは何かと気にかけて、声をかけてくれたんです。それがうれしかった」

