将棋PRESSBACK NUMBER

「将棋の内容が良くない」名人・藤井聡太23歳は話したが…“不調説”一掃のタイトル戦6連勝、糸谷哲郎37歳の「斬新な」初手端歩を退ける充実ぶり 

text by

田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

PROFILE

photograph by日本将棋連盟

posted2026/04/15 06:00

「将棋の内容が良くない」名人・藤井聡太23歳は話したが…“不調説”一掃のタイトル戦6連勝、糸谷哲郎37歳の「斬新な」初手端歩を退ける充実ぶり<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

名人戦4連覇に向けて好発進を切った藤井聡太名人

 一方、挑戦者の糸谷八段は若い頃に「怪物」の異名がつき、盤外での言動が何かと注目された。新人王戦で優勝した当時18歳の糸谷が表彰式で、「現在の将棋界は斜陽産業。僕たちの世代で立て直さなければならない」と、異例の挨拶をして驚かせた。『将棋世界』誌のインタビューでは、独自の視点でこう語っている。

「読書好きの祖父母の影響で、幼稚園の頃からアガサ・クリスティー、司馬遼太郎、小松左京などの小説を読みました。人生の究極の価値を見つけるために大学に進学します。ニーチェの言葉のように、神は死んでいると思います」

 糸谷は大阪大学文学部に入学。その後大学院に進学し、ハイデッガー哲学を専攻した。2014年の竜王戦七番勝負で森内俊之竜王(44)を4勝1敗で破り、初タイトルの竜王を獲得した。広島県出身の棋士のタイトル獲得は、1958年の升田幸三名人以来、56年ぶりのことだった。

ADVERTISEMENT

 しかしその後、糸谷はタイトル戦で敗退し続けた。順位戦は5期連続でA級に在籍したが23年に降級し、最終戦の対局場の静岡市「浮月楼」の桜に例えて、「散っても来年はまた咲く桜のように、自分も返り咲きたい」と語った。

 そして25年にA級復帰を果たすと、今年2月26日に行われたA級最終戦の前夜祭で、「花は落ちても、また来年、より大きく咲けること示したい」と力強く語った。

棋士と常務理事の二刀流として

 糸谷は「将棋ファンの裾野をもっと広げたい」との強い考えから、25年4月に将棋連盟の理事選挙に初めて立候補して選出された。棋士と常務理事の「二刀流」となった。名人戦主催紙のインタビューにこう答えている。

「理事の仕事が増えて生活は激変しました。でも将棋が楽しくなりました。AI(人工知能)で最新型を研究するのではなく、自分が面白いと思う将棋を指していくことに方針を変えました。今期のA級順位戦でも、初手に▲1六歩と端歩を突いたり、永瀬九段戦でも初手に▲3六歩と指し、新しい形で戦えました」

 将棋連盟の役員が名人戦に登場するのは、1986年の大山十五世名人(当時会長)以来となる40年ぶり。大山は84年に結腸ガンのために年間休場を余儀なくされたが、85年度A級順位戦でプレーオフの末に中原名人への挑戦権を得た。時に63歳で、25回目の名人戦への登場だった。結果は1勝4敗で敗退した。

名人戦史上初の“初手端歩”

 藤井名人と糸谷八段の対戦成績は、名人戦第1局を迎えた時点で藤井9勝、糸谷1勝。

【次ページ】 木村義雄-阪田三吉「世紀の一戦」でも

BACK 1 2 3 4 NEXT
#藤井聡太
#糸谷哲郎
#永瀬拓矢
#増田康宏
#大山康晴
#中原誠
#森内俊之
#升田幸三
#アガサ・クリスティー
#司馬遼太郎
#小松左京
#フリードリヒ・ニーチェ
#マルティン・ハイデッガー
#木村義雄
#阪田三吉
#内藤國雄
#佐瀬勇次
#日本将棋連盟
#大阪大学

ゲームの前後の記事

ページトップ