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「めっちゃ怒りました」高校の恩師が振り返る阪神・村上頌樹の“ターニングポイント”…後の《虎のエース》が覚醒した「9失点の大惨敗」とその後
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田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2026/03/27 06:00
阪神の開幕投手を務める村上頌樹。奈良・智弁学園時代のターニングポイントとは?
本番前の最終調整に位置付けられる練習試合で、ボールの質がいいのにことごとく打たれる。小坂とともに原因を究明していった結果、どうやらセットポジションに入るまでの動作に癖があったのだと発覚した。
小坂は胸をなでおろした。
「それがたまたま、最後の練習試合で気づいたんです。あれがなかったら、センバツで負けていたと思います」
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秋の近畿大会で大阪桐蔭に打ち込まれたエースは、センバツで5試合全てに完投した。自責点はわずか2。防御率は0.38と圧巻のピッチングだった。そして、高松商との決勝戦では、中学時代から認められるバッティングでサヨナラヒットを放った。
小坂は「村上だけじゃないんです。全員が活躍してくれました」と、チームで勝ち取った初優勝を称える。ただやはり、歓喜の中心にいたのは村上だった。
当時の村上の評価は「まだまだ高卒でプロに行けるレベルになかった」と監督は言うが、大学からは勧誘の嵐だった。そのなかから選んだ東洋大でも、下級生時代から主戦を張り日本代表にも選ばれた。
村上が大学でも存在感を高められたことについて、小坂はチームメートからの刺激だと読む。2学年上には甲斐野央(現西武)、上茶谷大河(現ソフトバンク)、梅津晃大(現中日)と、大学からプロレベルのストレートを誇るピッチャーがいた。
「だからスピードだけにこだわらずに、他の部分を伸ばせたんちゃいますかね」
昨シーズンは投手3冠…阪神のエースに
村上は大学4年時の20年に故障したが、阪神が将来性を見越してドラフト5位で指名した。結果的にこれが吉と出たわけだ。プロに進んだ村上は、着実にキャリアを彩る。3年目の23年に初の2桁勝利と最優秀防御率のタイトルを獲得して新人王に輝き、昨シーズンは「投手3冠」となった。
今やプロ野球を代表するピッチャーとなった村上に、小坂は頼もしさすら覚えている。
「肝っ玉が据わってきたんじゃないですかね。マウンド上での姿がブレないですもんね」
巨人との開幕戦に村上がマウンドに立つ。小坂はその雄姿を、安心して見届けられる。

