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「はあ…」“最強・藤井聡太”復活の一局に永瀬拓矢がタメ息「研究会では近い棋力の方がいない」構想を無力化した“不調説払拭”の真相とは 

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大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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posted2026/03/25 11:01

「はあ…」“最強・藤井聡太”復活の一局に永瀬拓矢がタメ息「研究会では近い棋力の方がいない」構想を無力化した“不調説払拭”の真相とは<Number Web> photograph by Shintaro Okawa

王将戦を3勝3敗のタイに戻した藤井聡太六冠

 報道陣の控室に入ってからも、形勢が動く様子はなかった。藤井がじわじわと永瀬を追い詰めていく。

 午後3時50分、記者用のトイレに行こうと廊下に出ると、足早に対局者用のトイレに向かう永瀬の姿が見えた。入り口の手前で、「はあ」と吐息を漏らす。形勢不利の苦悩から出たものだろうか。

 しばらくして、日本将棋連盟の職員から終局後の取材について説明を受けた。通常、記者は何回かに分けて対局場に入室するが、80畳の広さを誇る名古屋対局場ではその必要はなく、一遍に取材ができる。

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 藤井が時間をたっぷり残しているので、逆転の要素は見当たらなかった。前局は途中まで「新王将誕生か」と少し体が熱くなっていたが、今回は「フルセットか」という静かな感慨で満ちていた。

興味を惹いた“永瀬へのある質問”

 午後6時3分、挑戦者の永瀬が投了した。一時はカド番に追い込まれた藤井に対して「不調」の声もかまびすしかったが、それを払拭する強い内容だった。

 終局後のフラッシュインタビューは、藤井の会心譜という前提で質問が進んだ。その中で興味を惹いたのは、永瀬へのある質問だった。

「一局を通じて、思われることがありましたらお願いします」という問いに対して、「▲4五歩(49手目)から▲2四歩(51手目)が自然だと思った記憶があるのですけど、対応がちょっと。詰めが甘かったかなと思います」と答えていたのだ。

 本局は永瀬が自ら趣向を凝らして早めに動いていったのだが、AIの評価値は芳しくなかった。「詰めが甘かった」という言葉を素直に受け取るなら、記憶違いでもあったのだろうか。

 もっとも将棋に必殺技はない。いくら後手で研究手を放っても、わずかに有利とされる先手が間違えてくれなければ、後手は有利にはならない。だから先手が知らない展開に持ち込んだり、複雑な局面に誘導したりしてミスを誘うのが後手番の一般的な戦い方だ。永瀬の研究やパフォーマンスと関係なく、藤井が間違えなかったということか。

いえ、1回も指したことがないです

 いずれにせよ将棋の内容に迫るには、永瀬の言葉がもっと欲しかった。

 感想戦の取材を終えてホテルに戻り、打ち上げが終わる頃を見計らって永瀬に取材依頼のメールを送った。

【次ページ】 研究会では藤井さんに近い棋力の方がいないので…

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