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「監督の息子だから部長になった」甲子園常連校になるまで“冷ややかな雑音”「決して親バカでは」センバツ優勝候補の親子指導者はどう封じたか
text by

間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2026/03/17 17:50
山梨学院の吉田健人部長(左)と吉田洸二監督。親子関係のチームにあって、どのようなチーム運営をしているのだろうか
「部長が学生コーチとして入ってきて、チームが一気に明るくなりました。部長は活気や気迫を大事にして、明るさも厳しさもあるタイプ。私が指揮していた当時の清峰高校を知っていることもあって、山梨学院も私の空気感に変わっていきましたね」
とはいえ、最初から部長にチームの練習を任せていたわけではない。指導の姿勢や知識など、一任するにふさわしい能力を認めたからだった。
健人部長の指導者としての礎は、学生コーチ4年目の1年と、その後コーチ業に専念した2年間の計3年間に築かれた。
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2018年から21年までの3年間、山梨学院は横浜高校で長年部長を務めた小倉清一郎氏を臨時コーチに招いていた。吉田監督は「小倉さんには選手だけではなく、部長も育てていただきました」と振り返る。
決して親バカではなく、1人の指導者として
小倉氏は一見、勝敗に直結しないように思える細部にまでこだわった。例えば中継プレーの精度や走者を目に入れながらの捕球、年間で一度あるかないかのプレーも練習を重ねた。細かいところまで詰めた練習が習慣化されると、普段のプレーが容易に感じられるという。
健人部長は小倉さんと常に行動を共にして、守りを中心とした指導法や相手チームの分析法などを学んだ。さらに、チーム全体の守備力を高めるため、ノックの練習も怠らなかった。選手の守備を上手くするには、ノックの技量が不可欠と考えていたのだ。
吉田監督が言う。
「指導者が、あんなにやるのかと思うくらいノックの練習をしていました。野手がギリギリ届くかどうかのところに打つ技術や打球の質。守備力の高いチームには必ずノックが上手い指導者がいます」
小倉氏から指導者の基礎を叩きこまれた健人部長は、学びを止めない。打撃指導に長けた指導者を見つけると、教えを受けて新たな知識として吸収した。吉田監督が語る。
「決して親バカではなく、1人の指導者として熱心に勉強していると感心します。打撃の理論に詳しい指導者から教わった内容をまねるのではなく、それぞれの指導者のいいところを取り入れて、自分なりにアレンジしています。個々の選手に合った教え方ができるため、今年のように打力が高くないメンバーが集まったチームでも得点力が落ちません」
周りからは色んな声がありましたが
吉田監督は、小倉氏の指導を受けて成長していく健人部長への信頼を深めていく。そして、役割分担を明確にした。

